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若者に「集中治療を譲る意志カード」年寄りの命は価値が低いのか...一歩間違えると非常に危険だ

   週刊ポストは、大阪大学人間科学研究科未来共創センター招聘教授で現役の医師でもある石蔵文信(64)の発言を取り上げている。石蔵が高齢者向けに作成した「集中治療を譲る意志カード(譲カード)」が話題である。そこにはこう記されている。「新型コロナウイルス感染症で人工呼吸器や人工肺などの高度治療を受けている時に機器が不足した場合には、私は若い人に高度医療を譲ります」

   石蔵はこう話す。ICUやエクモが足りない日本で、さらにコロナの重症者が増えると、現場の医療従事者は「命の選択」を迫られるかも知れない。「激務の医療従事者に重い精神的負担を強いるのは酷なので」、譲カードを作成したというのだ。石蔵は私より10歳も下である。偉い人だとは思うが、私は譲る気にはならない。命の価値は平等であるはずだ。年寄りだから手当てをしないでいいという考えは、一つ間違うと非常に危険だ。

   こういうことを年寄りにいわせる前に、政治家が、木っ端役人どもが、医療崩壊にならないように手を尽くすのが、あんたらのやるべき仕事であるはずだ。医療崩壊が心配だと繰り返す暇があったら、医療従事者たちにマスクや防護服を優先的に配れ、新国立競技場の中に集中治療室付きの新しい病院をつくれ。中国だったら、1週間でつくるぞ。今は医療崩壊ではなく、政治崩壊というべきである。

元木 昌彦(もとき・まさひこ)
ジャーナリスト
1945年生まれ。講談社で『フライデー』『週刊現代』『Web現代』の編集長を歴任。講談社を定年後に市民メディア『オーマイニュース』編集長。現在は『インターネット報道協会』代表理事。上智大学、明治学院大学などでマスコミ論を講義。主な著書に『編集者の学校』(講談社編著)、『週刊誌は死なず』(朝日新聞出版)、『「週刊現代」編集長戦記』(イーストプレス)、 『現代の“見えざる手”』(人間の科学社新社)、『野垂れ死に ある講談社・雑誌編集者の回想』(現代書館)などがある。

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