「東京最後の日に一緒に東京タワーに登ってほしい」「離婚届の提出に同行してほしい」「花見の場所取りをしてほしい」――専業主婦の妻・沙紀(比嘉愛未)と間もなく1歳になる子供がいるサラリーマン・森山将太(増田貴久)は勤めていた会社を辞め、「なんもしない人(ボク)を貸し出します」「ごく簡単な受け答え以外、なんもできかねます」という奇妙なサービスを始めた。
依頼はツイッターで受け、仕事が終わると、その内容や感想をツイッターでゆる~く発信する。そのツイートを見た人が新たな依頼者になって......といった具合に依頼者が増え、時には1日に何件もの依頼が舞い込んでくる。だが、依頼者からもらうのは現場までの交通費と、飲食代がかかった場合にその実費だけなので、一家3人は森山のサラリーマン時代の貯金を取り崩して生活している。
そんな「レンタルさん」こと森山に「1時間後に依頼することは可能でしょうか?」という急な問い合わせがきた。依頼主は生後9カ月の子供を持つ主婦・佐々木麻衣(徳永えり)で、独身のころから通っていたレストランが今日で閉店してしまうので、最後の思い出のために店に同行してほしいという。
依頼主は子連れ外出して周囲に迷惑がられたことがトラウマに
麻衣は以前、子供と一緒に外出して周囲に迷惑がられたことがトラウマとなり、子連れでの外出に不安を抱いているのだ。森山は青いキャップ、グレーのパーカーにリュックサックといういつもの出で立ちで麻衣の家に赴いた。
この日の外出でも麻衣の不安は的中し、ベビーカーを持って混雑したバスに乗ろうとして乗客から嫌な顔をされたり、やっとの思いでたどり着いたレストランでは子供が大声で泣き出されたりする始末だ。しかし、森山はオロオロする麻衣をじっと見守るだけだ。「簡単な受け答え以外はなんもしない」という約束だからだ。
森山が一児の父だと知った麻衣は、育児の悩みを打ち明ける。森山はそんな麻衣に「泣きたいときに泣いて、笑いたいときに笑って、本当は大人もみんな、そうでいいと思うんですけど」とポツリ。その言葉を聞いた麻衣は......。
何もしないことで、依頼者が忘れていた思いや、見えていない大切なことに気づかせる不思議なドラマ。NHKのドキュメンタリーでも紹介された実在する〝レンタルなんもしない人〟森本祥司さんの実話をもとに制作されたフィクションだ。(深夜0時12分放送)
寒山