結婚よりも留学を選んだ古山裕一(窪田正孝)は、「別れてください。夢を選びます」と関内音(二階堂ふみ)へ手紙を書いた。その後、まったく曲が書けなくなってしまった。さらに、追い討ちの様にイギリス留学を取り消すという国際郵便がくる。世界大恐慌で財政がひっ迫し、もう支援できないというのだ。
愕然として裕一は、その連絡を父・三郎(唐沢寿明)に渡す。「諦めんな。何とがなるって」。そうはいっても、三郎にあてがあるわけではない。
裕一「もう終わり。すべて終わりだ」
三郎は裕一の状況を音に手紙で知らせた。手紙のあて先は沼津の住所だったため、音の母の光子(薬師丸ひろ子)が音楽学校受験のために東京にいる音に慌てて届けた。
三郎からの手紙を読んだ音は、いてもたってもいられず福島に向かう。
「また出会って。運命だよ。音楽だってそうよ」
裕一を探しまわって、川俣銀行の同僚に教えてもらった教会を訪れた音は、ハッとする。幼い頃に父に連れられて飛び入りで歌った記憶がよみがった。オルガンの陰に裕一はいた。「音さん・・・」
音「裕一さん、あたしお父さんにここへ連れられてきたことがある。ここで歌ったの」
壇上の音を見た裕一も、その日の記憶がよみがえった。楽しそうに歌っている少女に心を奪われたあの日。あの少女が音だったなんて。「あの時、出会ってたんだ。ここで歌う君を見てたんだ」。二人の思い出がひとつになった。
裕一「僕はひどい男だ。あなたを捨て、留学を選んだ。あなたに会う資格はありません。僕は銀行員として働くしかない。僕を忘れて、一流の歌手になってください」
音「小さい時に会って、また出会って。運命だよ。音楽だってそうよ。また出会うわ。裕一さんをほっとくはずがない!」
裕一「僕は、音楽にかけるべきところをあなたに愛を求め、家族に感謝しなかった。音楽の神様に見捨てられたんだ」。自分を責める裕一は教会から出て行った。
音「裕一さん!わたし、諦めないから。なんとかするから待っとって!」
(NHK総合あさ8時)