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大林宣彦監督 生きていたら持ち掛けたかった「安倍暗殺」という映画撮らない?

   ところで、先日、映画「大統領暗殺」(劇場公開日 2007年10月6日)をテレビで見た。 <07年10月19日、アメリカ合衆国第43代大統領ジョージ・W・ブッシュが何者かの凶弾に倒れる。狙撃の瞬間はメディアを通して瞬く間に世界に広がり、衝撃を与える......。既存のニュース映像などをたくみに使用し、フィクションでありながらも、大統領暗殺の瞬間をリアリティ溢れる映像で表現。全米では公開規模を縮小されるなど、議論を呼んだ>(映画.comより)

   見逃していたので、今回初めて見たが、ドキュメンタリーといわれてもわからないほどリアルで、現場の混乱からテレビニュースの映像、ブッシュア亡き後のチェイニー新大統領の演説など、認知症気味の私は、一瞬、ブッシュって暗殺されたっけと、勘違いしてしまうほどだった。

   大林宣彦監督が亡くなった。享年82。私は、大林映画の熱心な観客ではないが、大林監督が立川志らくを可愛がっていたので、何度か席を同じくした。赤川次郎の小説が原作の「あした」を志らくが舞台にしたことがあった。尾道市を舞台にした、"新尾道三部作"の2作目に当たり、死が重要なテーマになっている。

   強い反戦の言葉は口に出さなかったが、大林の映画には、死と戦争が潜んでいた。 大林監督が生きていたら、私は彼に「安倍暗殺」という映画を撮らないかと持ち掛けるだろう。脚本は私が書いてもいい。大林は何といっただろうか。

   週刊ポストに最後の秘境といわれる「飛田新地」が、コロナ休業を余儀なくされた日のルポがある。大阪・西成に残る色町「飛田新地」が、4月3日からコロナによる全店休業を実施した。その後、4月7日に安倍首相が緊急事態宣言を発令したが、その日の午後4時ごろ、飛田近くの居酒屋の女性と客のやり取りがおかしい。

   ここは1杯500円、カラオケ1曲100円という、近年急増した居酒屋カラオケだ。 初老の男が「コロナ、おるか?」「おらんわ!」「ほな、入るわ」。濃厚接触の極みであるSEXを売りにする飛田だから、非常事態が出る前から、自主的に消毒などは徹底してやってきたという。

   だが、コロナ感染が本格化してきて、飛田の「新地料理組合」内で侃々諤々の議論があったという。全店休業すれば、女の子はどうするのか、店が潰れると悲鳴のような反対論が噴出したそうだ。新地の利用者は3割が地元。府外の人がおよそ5割。あとはインバウンドの中国人だったという。中国人は姿を見せず、もし一人でも感染者が出たら飛田は終わる。そして二度と復活できない。

   そうした危機感から、強引に営業した店は除名処分という厳しい条件を付けて、休業に踏み切った。今度営業を再開したら、行ってみようか。

元木 昌彦(もとき・まさひこ)
ジャーナリスト
1945年生まれ。講談社で『フライデー』『週刊現代』『Web現代』の編集長を歴任。講談社を定年後に市民メディア『オーマイニュース』編集長。現在は『インターネット報道協会』代表理事。上智大学、明治学院大学などでマスコミ論を講義。主な著書に『編集者の学校』(講談社編著)『週刊誌は死なず』(朝日新聞出版)『「週刊現代」編集長戦記』(イーストプレス)『現代の“見えざる手”』(人間の科学社新社)などがある。

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