昭和4年(1929年)、はかなく散った初恋から1年あまり、古山裕一(窪田正孝)は黙々と川俣銀行で仕事に打ち込んでいた。生気のない裕一を同僚たちは心配している。そんな時、小学校の幼なじみで、いまは新聞記者の村野鉄男(中村蒼)が、音楽雑誌に載っていた国際作曲コンクールの募集記事を見せにきた。
最初は乗り気でなかった裕一だったが、銀行の同僚たちの後押しもあって挑戦することを決めた。長いブランクのせいで、曲作りはいっこうに進まなかったが、鉄男(中村蒼)がそらんじていた『竹取物語』の一節がヒントになり、裕一はひらめいた。
裕一「歌のないオペラだよ。日本古来のメロディーをふんだんに取り入れた交響曲にするんだ」
鉄男「お前が音楽に戻ってくれで、よがったよ」
裕一「違うよ。これを区切りにする。音楽に別れを告げるための儀式なんだ」
イギリス留学を伝えると文通はぷっつり途絶えてしまった
昭和5年(1930年)3月、裕一のもとに運命を変える知らせがきた。裕一の作った交響曲『竹取物語』が史上最年少で2位を受賞したのだ。イギリスへの留学費も支払われるという。
そのころ、豊橋では17歳になった関内音(二階堂ふみ)が、外国帰りの御手洗清太郎(古川雄大)の下、声楽を学んでいた。新聞記事で裕一の受賞を知った音は、自分とたった2歳しか違わない青年の快挙に、感動してファンレターを送った。これがいずれ夫婦となる人生の始まりである。文通で気持ちを通わせ、裕一は会ったこともない音に恋していた。
コンクールへの応募にかんかんだった伯父の権藤茂兵衛(風間杜夫)は、受賞を知って一転、留学を認める。どうせ失敗して帰ってきて、今度こそ音楽を諦めると踏んでいたのだ。
留学が決まったことを知らせると、音からの手紙は途絶えてしまった。情緒不安定になった裕一に、同僚の菊池昌子(堀内敬子)はあるアドバイスをした。(NHK総合あさ8時)