12日(2020年4月)の東京の新たな感染者数は166人。5日連続で100人以上を記録し、患者数の合計は2068人。1週間で倍以上になっている。感染経路不明の感染者も増えており、東京歯科大学市川総合病院の寺嶋毅教授は「無症状の感染者や軽症者からの感染拡大を防ぐためにも、PCR検査の数を増やしたほうがいい」と提言した。
ただし、それには、「検査をする人材不足の解消」「医療従事者の感染予防のための物資供給」「無症状・軽症者の受け皿の確保」の3つの課題があるという。
安倍首相は1日に2万件のPCR検査ができることを目指すとしているが、実際の検査の現場は過酷さを増している。
安全のため恐ろしく手間と人手がかかる作業
首都圏にある病床数500床以上、PCR検査の検体採取や軽症感染者の入院・治療を行っている病院の実情も取材した。この病院では1人の患者ごとに医師や看護師の防護服を使い捨てにしている。敷地内にプレハブ小屋を建て検体を採取しているが、1軒の検査に1時間かかるという。防護服に着替えるのに5分、患者を施設に案内するのに5~10分、検体採取に5~10分。ここで被験者は帰宅するが、そのあと医師は部屋の清掃と換気に15~20分、移動して着替えるのに5~10分かかっている。つまり、1日最大で8件が限界だというのだ。ほかの患者の診察・治療もあるので、好きない時は2~3件しかできない。
元テニスプレイヤーの杉山愛は「検査をもっと受けられないのかと思っていたが、こういうことだったんですね」と驚いた。読売新聞特別編集委員の橋本五郎は「1日8件しかできないなら病院に迷惑かけないようにウチにいようという空気になればいいが、早く検査してもらいたいですよね」とコメント。
同病院では、1棟丸ごと新型コロナウイルス感染者用に使用し、棟内をグリーン、イエロー、レッドの3つのゾーンに区分けしている。グリーンゾーンで防護服に着替えて、イエローゾーンを通って、患者のいるレッドゾーンに入る。出るときはイエローゾーンで着替え、消毒して、シャワーを浴びて、グリーンゾーンに出る。
日本感染症学会専門医の加藤哲朗氏は「この病院でやっているようなゾーニング(区域分割)は必要です」として、「今までは軽症者も入院していたが、今後はホテルなどの施設に移動する。ベッドに空きが出るようになれば、医師・看護師の負担も減ってくるし、院内感染も減る。有効な対策だと思う」と話した。