高校生のときから互いに惹かれあいながら、病気の親友サクラ(杉咲花)の手前、想いを伝えられずにいた弥生(波瑠)と太郎(成田凌)は、サクラが死んだ後も、結ばれることなく別々の人生を歩んだ。
そして夢は破れ、愛する人を亡くし、苦悩の果てに再会した二人だが、あることから埋められない溝が生じてしまう。そんなある日、サクラから二人にあてたメッセージが届く。
『家政婦のミタ』『同期のサクラ』などテレビでヒットドラマを生み出してきた脚本家・遊川和彦の2作目の監督作で、男女の30年間の物語を3月のひと月の出来事で描くという一風変わったラブストーリーである。高校卒業後、別々の道を歩む二人が交わるようで交わらない恋愛映画らしいもどかしさが全編に漂わせながらも、テンポはいい。尺が決められているテレビドラマを主戦場にしているだけあって、限定した設定の中で上手くまとめあげる力はさすがだ。
東日本大震災までエピソードの一つにしてしまう軽さ
とはいえ、どこか連続ドラマのダイジェスト版を見させられているような気分になる。要するに、情報やキャラクターの感情が整理されて並んでいるだけで、30年間の男女の人生から醸し出されるはずの重厚感がない。最大の要因はさまざまな要素を詰め込み過ぎているからだろう。
親友サクラの病気(薬害エイズ)、サクラへのいじめ、弥生の政略結婚、東日本大震災と差別など、それだけで一つの映画になるような要素が表面的に散りばめられている。さまざまな「お題」を全て取り入れ、うまくまとめたような印象。もっとシンプルに弥生と太郎それぞれの日常を丁寧に描いて欲しかった。
とくに、震災という究極の非日常を物語のポイントに置くのであれば、それまでの日常の積み重ねこそが生きてくるのではないか。これでは、震災すらも「お題」の一つにしか捉えていないように見える。そもそも、震災を描いた映画なのに見やすいということこそが、この映画の抱える最大の問題なのかもしれない。
シャーク野崎
おすすめ度☆☆