今までにないテレビドラマを見せてくれる遊川和彦という脚本家がいます。初めて遊川さんと仕事をしたのは、私が日本テレビのドラマ制作部長を務めていた2004年でした。それ以前に、私が制作局のチーフプロデューサーのときに、六本木のカラオケ店でよく会っていましたが、仕事を一緒にするのはそれが初めてでした。
「女王の教室」という企画で、強権的な態度でクラスを支配する女教師(天海祐希)と小学校6年生の児童との1年間にわたる「闘い」を描いた、学園ドラマです。この企画が持ち込まれたときに、ドラマ部で企画会議を開いて意見を聞いたのですが、意見は2つに分かれました。1つは、「毎回ドラマが終わるたびに、何故この女教師が強権を発動するかが納得できなければ、次は見る気がおきない」という意見です。もう1つは「何故こんなに女教師は強権的なのかを理解できないほうが、最終回まで見てその理由が納得できたときの感動が大きい」というものです。
後者の意見を言ったのは、櫨山裕子(はぜやまひろこ)という女性プロデューサーで、私は聞いた瞬間に彼女の意見に賛成でした。彼女の助言もあって、私は2004年の年末に、渋谷のセルリアンタワーホテルの喫茶店で、日本テレビのプロデューサーの大平太と一緒に遊川さんと会いました。そこで、企画の趣旨を確認しました。企画趣旨は、私の意見(櫨山さんの意見)と一緒でした。
「女王の教室」への苦情はやがて賛辞に変わった
そして、2005年7月にドラマが始まるのですが、初回は14.4%で最終回は25.3%と高視聴率を獲得しました。私は、番組には苦情が殺到するけれども、信念を持って答えろという指示を出していたのですが、そのうちに苦情は賛辞に変わってきました。
番組が終わったあとに、スタッフと遊川さんと会食をしました。そのとき、私は遊川さんに伝えました。「このドラマはオリジナルドラマであることと、今まで他人がやっていないことが素晴らしいです」