なじみのお好み焼き屋で見かけた志村けん...いつも女性と一緒で芸能人らしさのない普通のオジサン

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   日曜日(3月29日)の東京は、朝の雨が霙へと変わり、やがてコロナの街に春の雪が舞った。 近くの公園に行ってみた。満開の桜の古木に雪が降り積もり、淡いピンクの花と一面の銀世界が、悲しいまでに美しかった。

   日本のコロナの感染は、予想されたように広がり続けている。そんな中で、爆笑王といわれていた志村けんが亡くなってしまった。享年70。週刊新潮によれば、3月16日にフジテレビの「志村でナイト」の番組の収録のためにやってきたが、体調不良のためすぐに帰宅してしまったという。自宅で4日間静養したが治らないため、20日に主治医の往診を受けた。「普通の風邪ではない」と診断され、東京済生会中央病院に入院するが、病状はよくならず、23日夜に新宿にある国立国際医療センターに移り、コロナ陽性が判明する。

   17日にはコロナによる肺炎を発症していたと診断されたそうだ。入院当初から意識はほぼなく、ICU(集中治療室)に入り面会謝絶。人工呼吸器が使える状態ではなく、「最終兵器のエクモを使う状態でした」(事務所関係者)。エクモは、肺機能が著しく低下した重い呼吸不全の患者に用いられる。今回の新型コロナで、エクモが使われた国内の症例は23で、回復したのは12例だという。日本呼吸器学会がまとめたエクモに関する注意事項には、「75歳以上は予後が悪く、一般的には適用外」と書かれているという。

   エクモは全国に1300台しかないそうで、エクモを使うか使わないか、「命の選別が必要になってくる」(東京都立多摩総合医療センターの清水敬樹救命救急センター長)。清水は、エクモは時間稼ぎをするための装置で、最終的には自分の力で治癒を目指すしかないともいっている。

   志村は1日に60本以上吸うヘビースモーカーだったため、肺に疾患があったことも、回復を難しくしたのではないかといわれている。亡くなる2、3日前には腎臓機能も低下し、人工透析をしていたそうだ。 志村の亡骸は、遺族と対面できずに荼毘に付されてしまった。志村は財力もあり、手厚い治療を受けたのであろう。それでも、発症からわずか13日でコロナの犠牲になってしまった。新型肺炎の恐ろしさにわれわれは震えた。

   週刊文春は、酒が好きで、競走馬を持つほどの競馬好き。生涯独身を通したが、浮名を流した女性は数知れず。女優のいしのようこと三鷹の豪邸で15年ほど一緒に暮らしていたが、結婚はしなかったと報じている。 「数多の女性と浮名を流し、02年に別れたキャビンアテンダントに数億円の慰謝料を払ったと報じられた。手切金や慰謝料は惜しまないため、トラブルに発展することはほとんどなかった」(ベテラン芸能記者)

   志村がよく来ていたカウンターのお好み焼き屋で何度か見かけたことがあった。いつも女性と一緒だったが、芸能人らしさのない普通のオジサンだった。志村が亡くなった夜、「東村山音頭」を久しぶりに聞いてみた。この歌の本家は三橋美智也である。生前、「笑われるのが好きなんです。人の笑顔を見るのが好きなんです」といっていたそうだ。日本のチャップリンがいなくなった。

新型ウイルス無策でも辞任に追い込まれない安倍首相の強さ「国民に政治を諦めさせた」から

   コロナの拡大に何ら有効な手を打てずにいる安倍首相を尻目に、小池都知事は精力的に発言しているように見える。だが、志村けんの死を「コロナの危険性を伝えてくれた最後の功績も大きい」といって、「死者を冒涜するのか」「功績といういい方はおかしい」と批判を受けたり、「目立ちたい」が目立ち過ぎて、舌禍が目立つ。

   また、安倍が望む東京オリンピック延期に協力し、その見返りとして、次の都知事選で反小池の都議会自民党に「矛を収める」よう安倍に指示させたというのだ。したたかな小池は、コロナ感染でも、このままでは「ロックダウン」せざるを得ないと強い都知事を演じ、安倍のお株を奪おうとしている。

   一方の安倍首相だが、コロナ感染拡大への有効な対策も打ち出せず、経済の急速な悪化や「自粛」のために給与ももらえず、突然解雇された人たちへの補償にも言及しない姿勢に、批判が高まっている。

   そんな中で、延期された東京オリンピックを来年7月に決定してしまった。IOC側の意向ではなく、何が何でも自分の任期中にやりたいという安倍がゴリ押ししたのであろう。 呆れ果てるが、安倍政治とはそんなものだと諦め、異議を唱えず、無関心な人間が多いように見える。

   安倍政治の唯一の"功績"は、国民に政治を諦めさせたことだと喝破したのは、元自民党で建設大臣までやった中村喜四郎である。中村はゼネコンからの収賄事件で逮捕・有罪になった。刑を終えて出て来ると、小泉純一郎の郵政選挙に無所属として出馬し当選。14期連続で議員バッジをつけているモンスターのような男である。

   彼のインタビューを中心に、中村喜四郎という人物を描いた「無敗の男」(常井健一・文藝春秋)が話題である。公選法違反疑惑の渦中にある河井案里が読んで、絶対議員を辞めないと決意を新たにしたという。

   中村は小沢一郎などと組んで野党共闘を仕掛けているといわれるが、安倍政権批判が的を射ている。彼は、野党がだらしないといわれるが、そうではなくて、安倍政権は国民に政治を諦めさせることに成功した特殊な長期政権で、自民党内に自浄作用がなくなったからだと指摘している。私も、日本政治の本当の危機はそこにあると思う。

元木 昌彦(もとき・まさひこ)
ジャーナリスト
1945年生まれ。講談社で『フライデー』『週刊現代』『Web現代』の編集長を歴任。講談社を定年後に市民メディア『オーマイニュース』編集長。現在は『インターネット報道協会』代表理事。上智大学、明治学院大学などでマスコミ論を講義。主な著書に『編集者の学校』(講談社編著)『週刊誌は死なず』(朝日新聞出版)『「週刊現代」編集長戦記』(イーストプレス)『現代の“見えざる手”』(人間の科学社新社)などがある。

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