新型コロナウイルスの感染は、どこでうつったかわからないわからない感染者によって拡大していることがわかってきた。東京の墨田区保健所はこの感染経路のわからない人の行動調査に多くの時間を割いている。陽性と確認されると、電話で14日前からの行動、通勤経路、最寄り駅、マスクの有無、買い物はしたかなど細かく聞き取り、その情報は東京都に報告され、感染拡大のおそれがあれば、消毒やさらなる調査を行う。
しかし、聞き取り調査が完了しないうちに症状が悪化し、病院に搬送され、人工呼吸器を挿管されるなどして調査が難しくなるケースが増えている。そんななか、隣接する台東区の中核病院「永寿総合病院」で院内感染が発生し、墨田区が検査の一部を担うことになった。墨田区保健所は1日約120件以上の電話相談、体調の把握が必要な人は多い時で45人。これらの対応を6人の保健師と2人の医師で行っているが、これ以上増えれば対応は難しくなると、危機感を強めている。
医療現場は受け入れこれ以上もう無理
感染爆発を防ぐもう1つの鍵となるのが、帰国者からの感染である。墨田区は検疫所からの報告をもとに、区内に滞在するすべての帰国者を把握し、全員の体調を2週間追い続けている。保健所のマンパワーが限界に近付く、感染爆発を防ぐギリギリの闘いが続いている。
医療現場の一部ではすでに限界を超えている。特定感染症指定医療機関の国立国際医療研究センターは重症患者を他の病院に回さざるを得ない事態に陥っている。そうした転院依頼が増加しているのが都立多摩総合医療センターだ。ベッドが不足することを見越して、救急センターに陰圧室をつくり、60床に増やす準備をしているが、感染爆発が起これば持ちこたえられるか危機感を募らせる。
国際医療研究センター病院の国際感染症センター長・大曲貴夫氏はこう話す。「東京都の患者数の増え方は、ニューヨークのような大流行の起こっている大都市で最初に起こったこと。数週間で重症者が増えています。最初は落ち着いているが、あれよあれよという間に悪くなる患者も増えています」
パリは外出禁止守られず深刻化
東京都が確保した140床はすでに超過し、3月30日(2020年)に500床の受け入れ態勢を確保。最終的には都内全体で4000床の確保を目指す。
小池知事は、このまま何もしなければ都市封鎖もありうるとしている。フランスは2週間前から外出が大幅に制限されているが、医療従事者としてパリに駐在する日本医師会組合政策研究機構の奥田七峰子氏は、フランスがこうした事態に陥った背景に政府や市民の油断があったと指摘する。
外出許可証を政府のホームページからダウンロードして氏名と外出理由を記入し、買い物時にも携行する決まりだったが、「外出禁止が命じられても、当初は散歩に出る人もいた」という。そのため、罰則は次第に重くなり、違反を繰り返すと約44万円の罰金と禁固刑が科せられるまでになったが、フランスでは現在も感染者数は増え続けている。
罰則が伴わない日本は、各人が感染を広げないという意識を徹底できるかというところにかかってくる。大曲氏は「私たちが適切な行動を取れれば、この感染の危機は乗り切れると考えています」と語った。
※クローズアップ現代+(2020年3月31日放送「感染爆発の重大局面①"首都封鎖"は避けられるか」)