新型コロナウイルス感染拡大対策として、多くのイベントが中止や延期に追い込まれるなか、劇作家・演出家の野田秀樹さんが1日(2020年3月)に発表した「一演劇人として劇場公演の継続を望む」とする意見書がネット上で賛否両論の論争を読んでいる。
野田さんは、自身の公式ホームページ「野田地図」で、感染症の専門家と協議して対策を十全に施すことを前提とした上で「予定される公演は実施されるべき」と訴えた。理由として「演劇は観客がいて初めて成り立つ芸術です。スポーツイベントのように無観客で成り立つわけではありません。ひとたび劇場を閉鎖した場合、再開が困難になるおそれがあり、それは『演劇の死』を意味しかねません」と訴えたのだった。
「演劇はスポーツと違って無観客で成立しない」
この意見書についてはネット上で賛否両論が起こっている。まず賛成派の意見では、同じ劇作家・演出家の平田オリザさんが連帯を表明した。
「演劇は応援を行うスポーツ観戦や、ファンの飛沫が飛び交う音楽ライブではありません。俳優からの飛沫感染の可能性がある演目は最前列三から五列を無観客とするといった上演方法も考えられます。少しでも体調に懸念のある方にはご来場を控えていただきながら、多くの上演が継続されることを望みます」
ほかにもこんな声が――。
「さすが野田秀樹サン。右へ倣(なら)えじゃなく、ちゃんと自分の頭で考えるということ。スポーツや音楽ライブと違い、笑う以外は静かに鑑賞する演劇だけに」
「野田秀樹さんの勇気ある発言。ありがたい。右へ倣えの同調圧力に簡単にうなずき中止することは、 表現者、裏方、演劇、落語、音楽、すべての公演に関わる仕事をしている人々から仕事を奪うこと。生活、生きる糧、命を奪うこと。熟慮してください。悩んで解決して、やれる公演はぜひ中止しないで!」
「ほんとうに死活問題ですね。イベント自粛呼びかけているけど、映画はいつも通りだったし、いろいろ矛盾を感じた週末だったなあ」
「演劇は死ななくても、人々が死んでもよいのか」
しかし、批判派が圧倒的に多い。
「末端の演劇人として、芝居を続けたいという気持ちは非常にわかる。が、『感染者、重症者が自分の舞台から広がったらどうする?』という恐怖も十分にある。そのときこそが『演劇の死』だろう。『身勝手な芸術家たち』という意見が広がることを憂う」
「一演劇人の責任で大勢の人々が感染する事は許されない。演劇は死ななくても、人は死ぬのだ」
「観る側も余裕を持って劇場に行けない、余裕を持って楽しめないということも考えて欲しいですね。ファンはこんなことで『「演劇の死』などとは思いませんよ。野田さんらしいコメントとも言えるけどピントがずれている」
「売上減って困りますと素直に言えばいいものを、何が『演劇のシ』だよ。演出としては不合格です」
「ひと月やふた月閉じたくらいで死ぬような演劇なら、存在する価値はない。どうしても必要なものならいつでもどこでもいくらでも生えてくるはずだ。あなただって最初はそうだったはずでしょ?」(テレビウォッチ編集部)