日本テレビのバラエティー番組のレジェンド細野邦彦のもとで、ディレクターとして働きはじめてしばらく経った頃、リビアのカダフィ大佐の取材話が舞い込みました。リビアの建国記念を祝うイベントの取材だったのですが、細野さんと私を含めて4人でリビアへ向かいました。この取材旅行にアシスタント役で同行したのが、当時「ルックルックこんにちは!」という朝のワイドショーに出演していた、あの小池百合子女史だったのです。(因みに彼女と私は同じ年の生まれです)
リビアに招待されたのは。テレビ界でいえば、日本テレビとテレビ朝日だけでした。リビアがどんな国か、あるいはカダフィ大佐がどんな人なのかについて、ある程度の知識は身に着けました。現地に入り、在リビア日本国大使館にお招きを受け、食事を取りながら取材の要点は勉強しました。
祝賀イベント当日、会場となった広いスタジアムに、ヘリコプターで登場したカダフィ大佐は、幾重にも車の周りを包囲したSPに守られ凱旋しました。人民たちの「カダフィ、カダフィ」という叫び声が、印象的でした。当時の国際情勢を反映し、形通りの取材以外は余りできませんでした。
監視下のリビアで発揮された小池百合子さんの交渉手腕
ひと通り取材はしたものの、さらに撮りたいと思うような魅力的なことはなく、先方のセッティングした取材をさぼってホテルで寝ていました。当然、当局の心象は悪く、問題に発展しかけた頃に、「もう取材はやめて日本に帰ろう!」と細野さんが言い出したのです。ところが、肝腎のパスポートは当局に握られている。そんな中で小池女史は、独自の交渉手腕を発揮して、見事、当局からパスポートを奪還してくれたのです。
夜明けを待って、ホテルから逃げ出すことにしたのですが、当局の監視下でタクシーの手配もできないまま、荷物をかかえてホテルを出ると、なんと、向うからトロトロと走って来る車が1台・・・。それは、空車のタクシーだったのです。急いで乗り込み、チップをはずんで一路、空港へ!
ところが、空港にも当局の係官が見張っているではありませんか。すると、この場面でも小池女史の活躍で何とか切り抜け、やっとのことで英国航空に搭乗が叶いました。西側の飛行機で一息ついた時には、どっと疲れを感じたのを覚えています。帰国後、無事にこのリビア取材番組の放送は果たしました。
あれから約40年の月日が流れ、今となっては懐かしい想い出となりましたが、その後、小池百合子さんとご一緒する機会はありませんでした。