悩み続けた「良い親父になれない」
こんな野村さんでも最後まで悩んでいたのが、父親としてどうあるべきかだった。「良い親父になれずにきょうまできた」「どういう存在でいるべきかが想像できないんだ」
息子で捕手だった克則さんを自分が監督をしていた球団(ヤクルト)で指導したが、目立った成績は残せなかった。野村監督が「ひいきしている」と批判されることもあった。克則さん本人も「ふたことめには野村の息子といわれ、つらかった。なんで普通に見てくれないのかと思ったことはある」と振り返る。
その克則さんは今年、楽天の一軍コーチになって、「違った気持ちが芽生えた。人の痛みを知り、選手のために何ができるか考え続けろという父の言葉が支えで、背中の教えじゃないけど、存在感とはそういうことか」と思い始めたそうだ。
武田真一キャスター「野村さんは愛にあふれた夫であり、父親であり、指導者だったんだと感じます」
「こう生き抜くんだと教えていただいた」(元ヤクルト・古田敦也さん)、「野球界でみんながなんとなく知っていたことを整理してくれました」(栗山英樹・日本ハム監督)、「ノムさんの偉大な功績と野球への夢は生き続けるはずです」(長嶋茂雄氏)と、人と教えを残した人生だった。
※NHKクローズアップ現代+(2020年2月12日放送「密着半年 野村克也さん 最期のメッセージ」)