「財を遺すは下、仕事を遺すは中、人を遺すを上」
現役引退後は4球団で監督を務めた。たどりついた言葉が「財を遺すは下、仕事を遺すは中、人を遺すを上とする」だ。人を育てることにこそ価値があるという意味だ。
その育成手腕は野村マジックとよばれた。1999年の阪神監督の時、打撃不振の新庄剛志にピッチャーをやらせ、オープン戦で実際にマウンドに立たせた。「肩が強かったから。自分の素質と可能性に気づいてくれと考えた」そうだ。この年、打力を伸ばした新庄は主力選手として活躍する。
2009年の楽天では、2カ月間、勝ちから遠ざかっていた田中将大投手をあえてアドバイスをせずに突き放す。「自分で乗り越える経験が必要だと思った。(人は)耐える、我慢できると一段と育つ。楽をしていい結果は得られない」「若い人には夢を持って生きろの一点だけでいいと思う」