契約取ってくれば「不適正勧誘」も不問!かんぽ保険で年収2000万円の郵便局員

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   保険の不適切契約問題を引き起こしたかんぽ生命には、とくに多くの契約を獲得した郵便局員を顕彰する「優績者」と呼ぶ社内制度があった。そこからは、違反行為が疑われる契約でも黙認され、処分も甘かった社内体質が浮かび上がってくる。

   全局員の1・4%の「優績者」が疑わしい契約の4分の1以上に関与していた。その1人は「特定の客と1年間に何度も契約を結んだ。多くが高齢者や疑いを持たないゆるいお客だった」と語った。契約額は年数百万円から数千万円に上り、「優績者」は全局員の模範扱いされた。その中でも「ゴールド」「ダイヤモンド」などの格付けが行われ、トップクラスは年収1000万円以上、2000万円を超す郵便局員もいた。

   多少の不適切な勧誘でも、「利益さえ上げれば評価される」という受け止め方が局員の間に広がっていたらしい。「実際のところ、不適切な(保険)募集をしても、会社から処分されることはないという感覚でした」と話す優績者もいる。

会社あげての強引営業の勉強会

   こうした販売手法を他の局員に指導する勉強会が、「自主研」とよばれて全国で開かれていた。そこでは「契約がたくさんあるお客ほど狙いやすい」といった言葉が飛び、二重契約の解消を言い出した客への対処法を「いつやめる? あとでしょ!」のタイトルをつけた資料で解説していた。参加者の1人は「管理職からほぼ強制的に参加させられました。まねしろみたいな形でした。数字をあげるのがすべてみたいな体質がありました」と話す。

   被害家族の中には、68件の契約を交わした例もある。9年連続でダイヤモンド表彰を受けた「優績者」が担当し、高齢の母親が10年間、毎年新規契約を結ばされた。2015年には2カ月間に20件以上の契約をし、1000万円を超す保険料を支払わされていた。「郵便局の人というだけで信頼してしまいました。本当にあきれ、怒りが収まらない」と家族は話した。

客から抗議受けても返金して処分なし

   取材してきたNHKの望月健ディレクターは、「それでも局員自身が認めなければ不適正とはされず、客に抗議されても、返金すればなかったこととして処分されなかった」と報告した。

   日本郵政のガバナンス検証委員会委員長だった郷原信郎弁護士は、「うまくすり抜ける実態が放置され、その体質がずっと続いていた」と指摘する。NHKの安藤隆記者も「民営化による利益追求と低金利時代で商品の魅力が低下したことで、既存の高齢者契約の深掘りに走った」という。東京国際大の田尻嗣夫・名誉教授は「民営化で能力主義をいわれても、国民を喜ばせようとの考えはなかったのです」と批判する。

   郵政グループはいま「目標を見直し、契約の継続性を重視する」「70歳以上への営業をとりやめる」「顧客との会話を録音する」「十分に疑わしい契約は、局員が否認しても不適正と認定する」といった再発防止策を立てている。幹部からは「取り組みが不十分だった。『自主研』のあり方も見直す。信頼回復へ組織全体として覚悟をもって取り組む」という声がもれる。

   慶応大学の宮田裕章教授は「お客目線の意識改革で問題を生まない土壌を作り、一部の暴走をみんなで抑えて、サービスの質そのものを変え、改善につなげて」と提唱する。郷原弁護士は「日本郵政をどういうものにするかの選択肢を政治が国民に示す必要がある」と注文する。地域の暮らしと深くつながる郵政のあり方が問われている。

   *NHKクローズアップ現代+(2020年1月16日放送「シリーズ 検証・かんぽ問題② 郵政グループ 再生への課題は?」)

文   あっちゃん
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