客から抗議受けても返金して処分なし
取材してきたNHKの望月健ディレクターは、「それでも局員自身が認めなければ不適正とはされず、客に抗議されても、返金すればなかったこととして処分されなかった」と報告した。
日本郵政のガバナンス検証委員会委員長だった郷原信郎弁護士は、「うまくすり抜ける実態が放置され、その体質がずっと続いていた」と指摘する。NHKの安藤隆記者も「民営化による利益追求と低金利時代で商品の魅力が低下したことで、既存の高齢者契約の深掘りに走った」という。東京国際大の田尻嗣夫・名誉教授は「民営化で能力主義をいわれても、国民を喜ばせようとの考えはなかったのです」と批判する。
郵政グループはいま「目標を見直し、契約の継続性を重視する」「70歳以上への営業をとりやめる」「顧客との会話を録音する」「十分に疑わしい契約は、局員が否認しても不適正と認定する」といった再発防止策を立てている。幹部からは「取り組みが不十分だった。『自主研』のあり方も見直す。信頼回復へ組織全体として覚悟をもって取り組む」という声がもれる。
慶応大学の宮田裕章教授は「お客目線の意識改革で問題を生まない土壌を作り、一部の暴走をみんなで抑えて、サービスの質そのものを変え、改善につなげて」と提唱する。郷原弁護士は「日本郵政をどういうものにするかの選択肢を政治が国民に示す必要がある」と注文する。地域の暮らしと深くつながる郵政のあり方が問われている。
*NHKクローズアップ現代+(2020年1月16日放送「シリーズ 検証・かんぽ問題② 郵政グループ 再生への課題は?」)