米CBSテレビが2017年にスタートさせた本格法廷サスペンスドラマのシーズン1の放送が始まった。米国ではすでにシーズン4まで制作されることが決まっているというから人気のほどが伺える。日本でリメイク版が作られた「グッド・ワイフ」のスピンオフ・ドラマとされるが、キャストの一部が重なるだけで、ストーリーは全くの別物だ。
物語は、2人の主人公がいきなり人生のドン底に突き落とされるところから始まる。
富裕層の顧客を多く抱えるイリノイ州最大の法律事務所の共同経営者にしてカリスマ女性弁護士ダイアン・ロックハートは、ドナルド・トランプ大統領の就任式を見てショックを受け、事務所を退職して南仏プロバンスに移住する決意をする。
もう1人の主人公は、ダイアンと家族ぐるみの付き合いがあり、ダイアンが名付け親となったマイア・リンデル。イリノイ州の司法試験に合格し、ダイアンの法律事務所で新人弁護士として勤め始めた。
ところが、その直後、マイアの父親ヘンリー・リンデルが、運営していた投資ファンドの詐欺容疑で逮捕され、2人の運命は一転する。このファンドに投資していたダイアンは財産のほとんどを失い、マイアは極悪詐欺犯の娘として世間からバッシングを受け、勤め始めたばかりの事務所も解雇された。
トランプ批判と受け取れるシーンが随所に盛り込まれる
2人は何とか、かつてはライバルだった黒人や労働者など庶民の案件を扱う法律事務所に移籍した。そこで2人は米国社会が抱える様々な問題......大企業の労働者搾取やSNSによるヘイト攻撃、警官による暴行被害など......に直面することになる。
訴訟社会といわれる米国の司法制度の実態や、弁護士や検事による法廷での丁々発止の応酬がリアルに描かれて、引き込まれる。
一方、詐欺容疑で逮捕されたヘンリーは、事件はファンドから8300万ドルを着服したマイアの叔父ジャックスが仕組んだもので、冤罪だと主張している。さらに、そのジャックス叔父とマイアの母親レノアの不倫疑惑まで持ち上がり、マイアは家族を信じられなくなってしまう。
ドラマは、毎回の訴訟をめぐる法廷劇と、ヘンリーの詐欺事件をきっかけに浮上した家族の闇が重層的に描かれ、最後には、視聴者を思わず唸らせるドンデン返しが待っている。
ところで、シーズン1の放送が始まった2017年と言えば、まさに共和党のトランプ政権誕生の年。制作チームは当初、ダイアンが民主党ヒラリー・クリントン候補の大統領就任を大喜びするシーンを撮影していた。しかし、予想に反してトランプ候補が勝利したため、急遽、ダイアンがこの世の終わりのように失望するシーンを撮り直した。この後も、トランプ批判とも受け取れるシーンが随所に盛り込まれる。日ごろの報道姿勢だけでなく、ドラマでも党派性を鮮明に出すのが米国流だ。(日曜夜11時放送=1月19日は11時15分放送)
寒山