年末年始にかけて、2020年が激動の年であることを予感させる衝撃的なニュースが流れた。一つは、カルロス・ゴーン被告が故郷のレバノンへ逃亡していたことが、かの地に着いたゴーンからメディアを通じて発表されたことである。
年明け早々には、トランプ大統領が命じて、イラン革命防衛隊のソレイマニ司令官をイラクの首都バグダッドで殺害した。ソレイマがアメリカに対するテロ活動をしようと計画していたとトランプは「弁明」しているが、その根拠をはっきりさせてはいない。
以前からいわれていたように、今年最大の不安材料は、再選を狙うトランプであることを、自ら証明してみせたのである。イランのロハニ大統領は直ちに「報復する」と宣言し、8日にイラクにある駐留米軍基地2カ所を弾道ミサイルで攻撃し、米軍兵士を多数殺したと発表した。日本の新聞は、これを受けて9日朝刊で「イラン報復、米軍基地攻撃」(産経新聞)、「イラン、米軍攻撃 『報復』弾道ミサイル」(読売新聞)と、今にも全面戦争が起こるかもしれないと報じた。
しかし、アメリカ側は被害状況を精査して、米軍被害者はいないと確認、トランプは声明を発表して、「イランも沈静化の方向に向かっているようだ」(朝日新聞DIGITAL1月9日11時06分)、「米国は和平を受け入れる用意がある」(同)と述べた。
今回は、イラン側が「大人の対応」をしたため、最悪の事態は回避できたが、トランプが「イランはわが国の軍事力を怖れている」と勘違いして、今回のような愚行を繰り返せば、イランはためらうことなく、中東の米軍基地へミサイルを撃ち込み、中東全土が火の海になるだろう。
1962年の「キューバ危機」以上の深刻な事態になるかもしれないのに、安倍首相は"われ関せず"と正月はゴルフ三昧だったという。安倍の足許ではIR汚職が発覚し、東京地検特捜部がIR担当の内閣府副大臣だった秋元司を収賄容疑で逮捕した。秋元のほかにも、岩屋毅前防衛相や宮崎政久法務政務官などの実名が報じられ、その一人、日本維新の会の下地幹郎衆院議員は、2017年の総選挙中に選挙資金として100万円を、IR参入を目指していた中国企業「500ドットコム」から受け取っていたことを認めたのである。
特捜部の標的として、IR議連の幹部である細田博之元官房長官や河村建夫元官房長らの名前も取り沙汰されていると、週刊文春が報じている。菅官房長官もこの会社のCEO(当時)と面識があるというから、今月中に事業者の選定基準を示した基本方針を策定する予定だったが、先行きは不透明だそうだ。
週刊文春によれば、このままでは悲願の憲法改正などできはしないと、安倍首相本人が「もう疲れた」と洩らしているという。週刊文春は「パラリンピック閉幕翌日の『9・7退陣』」が濃厚だとしている。そうなれば、佐藤栄作の持つ「連続在位日数」を超えるし、岸田文雄に禅譲すれば、キングメーカーとして君臨できるという目論見だというのである。
1964年の東京五輪のときは、閉会式の翌日、池田勇人首相が佐藤を後継に指名して退陣している。それに倣おうというのかもしれないが、安倍首相を脅えさせる因縁も今年はある。
今年の干支は「庚子(かのえね)」というそうだ。60年に1度回って来る。60年前といえば1960年(昭和35年)。日米安全保障条約に反対する「安保闘争」が全国に広がり、安倍首相が尊敬する母方の祖父・岸信介内閣を総辞職に追い込んだ年である。
この年は、キューバ危機に直面するJ・F・ケネディが大統領に当選している。歴史は繰り返す。嫌な予感がする。
ゴーンに付き添って関空まで行った芸能事務所関係者って何者か?知りたい
昨夜8日、レバノンに逃亡したゴーンが会見した。2時間半にわたるワンマン会見を、あまり上手ではない同時通訳にイライラしながらテレビ東京とAbemaTVで見た。感想はひと言「がっかりした」
推定有罪、自白強要、人質司法、長すぎる公判など、日本の司法制度のおかしさを批判するのはいい。日本人の多くもそう思っている。日本から逃亡したやり方を明らかにできないのも理解できる。だが、肝心な、彼の身の潔白を証明する決定的な「証拠」は出してこなかった。
ゴーンが「仕組まれた」というこの事件の構図は、簡単にいうとこうだ。ルノーに吸収されることを怖れた日産幹部たちが、日本の政治家・検察と手を組み、この計画を潰そうとして起こしたクーデターだというのである。日産の人間の実名は出したが、政治家の名前は、レバノン政府と日本政府との関係があるからいえないという。この期に及んで、肝心なところをうやむやにするのでは、何のための会見だったのか。
確固たる裏付けのないまま、自分は無罪だと百万遍繰り返しても、聞く側の心には響かない。名前を挙げた川口均専務執行役員(当時)が菅官房長官と親しかったのは周知の事実である。菅は川口に頼まれて何らかの動きをした可能性があることを、ゴーンは知らなかったのだろうか。そうした「ゴーンしか知らない事実」を会見でぶちまけると思っていたのだが、何もなかった。
週刊新潮によれば、ゴーンの逃亡劇には元グリーンベレーが関わっていたが、日本人、それも芸能事務所の関係者が、ゴーンが品川から新幹線に乗り関西国際空港に至るまで接触していたと報じている。この人間は何者なのか、知りたいものである。
ポスト安倍の目がまったくなくなった菅官房長官――側近・手下次々逮捕や辞任でぼやき「俺も長くやり過ぎた」
週刊現代は「菅官房長官はこうして殺された」という物騒な特集を組んでいる。しばらく前までは、ポスト安倍の先頭を切っていたかのように見えた菅だが、自分が押し込んだ大臣らが次々にスキャンダルで首になり、自分の首も危うくなってきた。仕上げは、中国企業から賄賂をもらっていたことが東京地検特捜部に掴まれ、カジノ推進の担当だった菅の側近の秋元司が逮捕されてしまったことだった。
悪いことは続くもので、ピカピカだった小泉進次郎が大臣になった途端、女の問題が堰を切ったように報道され、薄汚れてしまったのである。さらに、国会を閉じた矢先、菅の最大の懐刀といわれていた和泉洋人首相補佐官と厚生労働省女性審議官との「京都不倫」が週刊文春で報じられた。
ここまでくると「偶然」などではない。裏に、安倍首相や、安倍から禅譲してもらおうと狙う岸田文雄もいるかもしれない。週刊現代によれば、菅は最近投げやりな表情で、「俺も長くやり過ぎたな。こんなに長く官房長官に居座る気はないんだよ」とぼやいているという。
菅は人望もカネも潤沢ではない。梶山静六に師事し、階段を登りながら安倍政権で重用され力を蓄えてきた。そんな男が「天下取り」を夢想した途端、寄ってたかって潰されたという構図である。令和の今太閤にはなれないようである。
元日の講談社名物広告からも消える「週刊現代」「フライデー」車内からも見捨てられた?
私は毎年、元旦の朝日新聞朝刊に載る出版社の広告を楽しみにしている。講談社と小学館は毎年一面広告をうつ。岩波書店や集英社も一面である。樹木希林が横たわっている写真が話題になった宝島は、今年は7日に見開き全面広告を出した。ベルリンの壁が崩れ、大勢の若者たちが壁の上でピースをしている写真にかぶせて、「ハンマー持て。バカがまた壁をつくっている。」と大書してある。いいメッセージだ。
新年の広告に出版社はそれぞれ、今年の「目標」のようなものを掲げる。講談社は「講談社大図鑑」と題して、池袋の新しいビルで、LIVEエンターテイメントを始める、女性向けWebマガジン「ミモレ」がサイトをオープンして5周年、2019年には講談社初となるニューヨークでのウォール広告を実現したなどと、近未来のイラストの上に、多くのことが謳ってある。
だが、その中に、週刊現代やフライデーのことは一行もない。講談社にとっては、もはや昔の一局雑誌は、ないに等しいのだろうか。いつだったか、だいぶ前に、出樋(だすぜ)一親週刊現代編集長が、一面広告に登場したことがあった。彼が手を振り上げている写真に、「出すぜ!」という吹き出しが付いていた。あれが週刊現代が大きな話題になった最後ではなかったか。
元日、その出樋から年賀状をもらった。今年で講談社を離れると書いてある。一時代を築いた戦士たちがいなくなっていく。その夜の酒は嫌に苦かった。
ニトリ・似鳥会長の経済見立て「東京五輪後は景気減速・円高だが、その時が投資のチャンス」
ところで、日本経済はどうなるのか。世界の3大投資家といわれるジム・ロジャーズは"変節"の人である。まあ、株をやっているのだから、当たり前なのだが、少し前には、週刊現代で「日本株を全部売り払った。これからは日本株は買わない」と御託宣を述べていたのに、今度は、週刊朝日で連載を始め、「日本株を買い戻そうと思っている」と喋っている。
日本経済の先行きは明るくないとしている前提は変わらない。リーマンショックが再び来るといっている舌の先から、日本株を勧めるというのは、株屋ならではの"嗅覚"なのだろうか。
しかも、買うんだったら、日本の農業だそうである。さらには、インバウンドが増え、菅官房長官が推進しているカジノや高級ホテル事業にも注目しているというのだ。この御仁、中国のカジノ企業が政治家に賄賂を渡して大問題になり、カジノ建設など霧散しそうなことをご存じないのか。
1月6日の「大発会」は中東情勢の影響を受け一時500円超も値を下げた。これから日本株が上がる根拠は何もない。いくら年金機構が買い支えても限度がある。一番重要なのは、自分だけが儲けたいと思っている人間に聞かないことである。株も競馬も、お互いのカネの分捕り合戦だ。いつでも儲ける人間は少なく、大半の人間はオケラになる。
週刊現代は、恒例の「ニトリ会長の経済予測」を掲載している。似鳥昭雄会長も、東京五輪が終われば、景気は減速し、円高になると見ている。彼が凡百の人間と違うのは、景気が悪いときは土地・建物・建築費が下がるため、「不況期に投資をすれば、割安に物件を手に入れることができ、優秀な人材の採用もできます」と考えるところである。さらにこれからは、デジタル革命に端を発する大再編成への備えが重要だと見ている。
私が編集者なら、この「具体的な方策」をぜひ聞きたいものだ。デジタル革命という言葉だけがひとり歩きしている昨今、似鳥はどのようなことが起きると考えているのだろう。凡庸な私のような人間には想像もできないが、そこにこそ、これからの出版の未来にも関わってくる「チャンス」があるのではないだろうか。(文中敬称略)