米軍によるイラン革命防衛隊のソレイマニ司令官の暗殺をめぐり、米国とイランの対立が激化している。世界ではこれが第三次世界大戦に発展するのではないかという心配が広がっている。ツイッターでは、4日(2020年1月)時点で、米国、英国など12か国以上で「第三次世界大戦」というワードが1位に急浮上した。
米国では選抜徴兵局のサイトがダウン。米国籍の男性は18歳から25歳までは登録が義務付けられており、緊急事態には徴兵可能になる。そのため、「徴兵されるのでは」という不安から問い合わせのアクセスが殺到したためだ。
「徴兵されるのでは」と震える米国の若者たち
仮にイランが報復するとして、Xデーは来月(2020年2月)10日から12日の可能性が高い。11日がイラン革命記念日であり、ソレイマニ司令官の喪が明ける時期でもあるからだ。
放送大学名誉教授の高橋和夫さんは、この事態が第三次世界大戦に発展する可能性については否定的だ。「第三次世界大戦というと、我々が昔想定していたのは、米国とソ連が核ミサイルを打ち合って人類が滅びるということです。イランは核ミサイルを持っていないし、持っているミサイルは米国まで届かない。危機感を示す言葉としてはよいですが、現実的にはないと思っています」と話す。
ほかの専門家はこの事態がどのような展開をすると考えているのか。
現代イスラム研究センターの宮田律理事長が考える最悪のシナリオは「中東が二分化する」というものだ。「米国、イスラエル、アラブ首長国連邦」VS「イラン、イラク、レバノン」という構図で、米国同盟勢力とイラン同盟勢力との戦いになるという。また、戦争になればロシアもイラン勢力に軍隊を派遣することになるかもしれない。イラン軍がイラクの米軍基地やペルシャ湾の米海軍を攻撃した場合、米国が核兵器を使用する可能性もあるという。
この事態に大喜びのIS(イスラム国)
軍事ジャーナリストの田岡俊次氏が考えるシナリオは「イランや親イランの組織がファテフをイラクの米軍基地に撃ち込む」というものだ。ファテフとはイラン製の短距離弾道ミサイルで、射程は300キロで精度が高く、小さくて運び易いのでどこからでも撃てる。米国にとってはどこから撃ってくるのか分からないので脅威だ。これが発端でミサイルの打ち合い合戦になる可能性があるという。
一方で、この事態を喜んでいるものもいる。IS(イスラム国)だ。「ソレイマニ氏は米国と一緒にIS退治をしていました。敵でもあったが、味方でもあったわけです。ISは着々と回復していくでしょうね」と高橋さん。
青木理(ジャーナリスト)「進むも地獄、引くも地獄。米軍が増派して力で抑え込もうとすれば、ずっと緊張状態で、最悪のシナリオもあり得る。逆に引けば引いたで、中東が複雑に液状化してテロの温床にもなり得るわけですから」