日産自動車前会長カルロス・ゴーン被告(65)の逃亡劇は、海外メディアをも驚愕させた。米ニューヨーク・タイムズは「カルロス・ゴーン、元特殊部隊の助けで日本から脱出」(2020年1月3日)、ラジオネットワークのヨーロッパ1も「ジェームズ・ボンドのような脱出劇でカルロス・ゴーンは世界のスターになった」(同5日)と報じた。
日本国内でのゴーン被告の足取りは、12月29日(2019年)の昼頃、自宅の玄関付近に設置された監視カメラに一人で外出する姿が映ったのが最後だ。米ウォール・ストリート・ジャーナルによると、ゴーン被告はこの日午後11時過ぎ、プライベートジェットで関西空港を出発。トルコのイスタンブールを経由して30日にレバノンに入ったという。フランスのテレビ局が入手した写真には、翌31日、キャロル夫人とワインを飲みながら大晦日の食事を楽しむゴーン被告の姿が写っている。
「そもそもゴーン事件は異常だ」と司法の専門家
また、ウォール・ストリート・ジャーナルは、ゴーン被告が出国時に身を潜めていた大型の黒いケースの写真を公開した。このケースは音響機器などを運ぶためのもので、ケースの底には呼吸をするための穴が開けられていた。2個あったケースのうち、1個には実際にスピーカーが積まれていたという報道もある。
ゴーン被告を運んだとされるプライベート機の出国名簿には、米国のパスポートを持つ、男性2人の名前が記入されていたという。このうち1人は米陸軍特殊部隊「グリーンベレー」の出身者。2009年、アフガニスタンで武装グループに拉致されたニューヨーク・タイムズの記者を救った人物と同姓同名だという。同紙によると、レバノンの仲介人がこの男性をゴーン被告に紹介したという。
英フィナンシャル・タイムズは、ゴーン被告の逃亡には推定でおよそ22億円の費用がかかったと報じた。
元東京地検特捜部の郷原信郎弁護士は「私も本当に驚きました。こういうことが可能だということを想定していませんでしたから」と驚きを隠さない。郷原弁護士はこう語る。
「ただ、ゴーン被告は堂々と声明を出し、これから記者会見もしようとしている。罪を免れるだけが目的ではなく、自分の正当性を主張するためにした。『日本の刑事司法に絶望した』という弁護士の言葉通りなのでしょう。この事件は特に異常です。公判の見通しさえ立っていません。検察から証拠も十分に開示されていなかった。一方で、奥さんとの接触はもう9か月も禁止されています」
玉川徹(テレビ朝日コメンテーター)「海外のメディアを見てみると、中には『そもそも本当にこれは罪に問える話なのか』という疑問もある。ゴーンさんが海外で会見をやった場合、日本の検察やメディアが話すことと、ゴーンさんが話すことと、日本以外の国にとってどちらに正当性があるかと言うのは、微妙なところだと思いますよ」