年末は「3年A組―今から皆さんは、人質です―」(日本テレビ系)やら、「アンナチュラル」(TBS系)やら、ヒットドラマの再放送を一気見せするのが定番となっていて、それはそれでつい見てしまうが、そんな中で、気前よく新作を見せてくれたことがまず嬉しい。おまけに内容がグッド。年の瀬に素敵なドラマをありがとう、と言いたい。
東京で暮らす27歳の佳奈(木村文乃)は勤めを辞めて現在は無職。母から、京都に住む70歳の大叔父(近藤正臣)が怪我をしたので様子を見てきてと頼まれ、京都にやってくるところから物語は始まる。
大きな事件や劇的な何かが起こるわけではない。大叔父のミッションを受けて、京都の町に自転車で繰り出し、店の人たちと会話し、ふれあう佳奈の1日1日が淡々と描かれるだけだが、これが実に興味深い。最初のおつかいは、鰻屋(鎌田川魚店)と豆腐屋(とようけ屋山本)と七味唐辛子屋(長文屋)。手書きの地図を渡された佳奈は、「スーパーに行けばいっぺんに用事が済むのでは」と疑問を感じながらそれぞれのお店を訪れ、初めて見るもの聞くものに興味を持ち、店の人と会話する。たしかに買い物はスーパーで事足りるし、便利だが、そういうところでは得られない経験がそこにはある。
「ネットに頼って好きなもの探す自由を手放しちゃいかん」
「おいしい和菓子屋、教えて」と頼む佳奈に、「ことわる」と大叔父。「なんで」「なんでもや」「いじわる。いいよ、ネットで探すから」という佳奈に、「やめとき。自分の好きなもんは自分で探さないかん。スマホなんかに頼らんと、自分の嗅覚だけで探したらええんや。あんたには好きなもんを探す自由があるんや」
大叔父の言葉で目からウロコ。自分の嗅覚よりも、ネットの点数を信じがちな現代人のいかに多いことか。「好きなもんを探す自由」を手放すなんてもったいないことだと、居住いを正す。そんなふうに、観光ガイドには決して載っていないような京都を楽しんだ佳奈は、1週間の京都住みで、自分を取り戻していくというハートウォーミングなお話だった。
酒屋で角打ちの仲間に入るまでに成長した佳奈は、一緒に飲んでいる人に「おじは生粋の京都人なんです」と言うと、「生粋って戦前から住まれてるんですか」「京都で戦前言うたら、応仁の乱ですわ」という京都ならではのあるある話も。