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熊谷6人殺害犯を「無期懲役」に減刑した36年前の「死刑基準」見直す必要ないか

   週刊新潮は、2015年9月に起きた熊谷6人殺害事件の犯人、ペルー国籍のジョナタン被告(34)に対して、一審の裁判員裁判で死刑判決が出たのに、東京高裁はそれを覆し、無期懲役判決を出したことに異を唱えている。

   東京高裁は、被告は事件当時、統合失調症に罹っていて心神耗弱状態だったことを理由に挙げているが、被告に妻と2人の娘を殺された遺族は、被告は妻と娘たちの遺体をクローゼットに押し込んで、床に着いた血痕も拭き取っていたし、捜索に訪れた警察官に気付くと内鍵を閉めるなどしているから、心神耗弱状態などではなかった、こんな判決を出した裁判長を怒鳴りつけてやりたいと語っている。

   なぜこのような判決が出るのか。よくいわれることだが、36年前の1983年に最高裁が示した「永山基準」というものがあり、「よほど残虐性が高い」と判断されなければ死刑は回避されてしまう。今回もそれが適用され、無期に減刑になったのだという。裁判員裁判が始まってから、一審で出した判決が二審でひっくり返ることがよくある。そのためもあってか、裁判員候補の辞退者が7割近くにも上るという。

   せっかく、辛い思いをしながら自分たちが出した判決が、二審でひっくり返されるのでは、苦労してやる意味がないと思うのであろう。せっかく、一般人の感覚を裁判に取り入れることで始まったのに、古めかしい永山基準を後生大事にする裁判官が「専門家の考え」で押し切るのなら、この制度は意味がないのではないか。今一度、この制度を見直す必要があると、私も考える。

元木 昌彦(もとき・まさひこ)
ジャーナリスト
1945年生まれ。講談社で『フライデー』『週刊現代』『Web現代』の編集長を歴任。講談社を定年後に市民メディア『オーマイニュース』編集長。現在は『インターネット報道協会』代表理事。上智大学、明治学院大学などでマスコミ論を講義。主な著書に『編集者の学校』(講談社編著)『週刊誌は死なず』(朝日新聞出版)『「週刊現代」編集長戦記』(イーストプレス)『現代の“見えざる手”』(人間の科学社新社)などがある。

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