44歳の長男を殺したとして殺人罪に問われている元農林水産事務次官の熊沢英昭被告(76)の裁判で、きのう12日(2019年12月)に被告人質問がおこなわれ、熊沢は殺害に至る経緯を言葉に詰まりながら述べた。
熊沢は月2回、無職だった長男宅に薬を届け、食費を払っていた。アニメ制作の学校を卒業した長男にコミックマーケットへの出品をすすめ、その手伝いをしたこともあった。
今年5月、長男は熊沢宅で同居を始め、前に住んでいた家のゴミにを「片づけなきゃな」と熊沢がいうと、バカにされたと激高した長男に、殴ったり蹴ったり、サイドテーブルに頭を叩きつけたりしたという。熊沢は家を飛び出し、「殺されるから帰れない」と妻に電話したが、「とにかく帰ってきて。土下座して命乞いすればいいと言っているから」と言われ、妻にも危険が迫っていると思い帰宅し、土下座して謝ったという。
数日前に妻あてメモ「これしか方法はないと思います。死に場所を探します。散骨してください」
この頃、熊沢は長男殺害をほのめかす妻あてのメモを書いていた。「これしか他に方法はないと思います。どこかで死に場所を探します。見つけたら散骨してください。英一郎(長男)も散骨してください。葬儀が終わったら、病院へ入院してください。心が落ち着くまでゆっくり休んでください」
事件はこの数日後に起きた。
検察側から、長男の家庭内暴力について警察などに相談しなかったのかと問われると、「親子関係が悪化すると思って相談しなかった」と答えた。証人として出廷した長男の主治医は、長男が自閉症の一種であるアスペルガー症候群だったこと、思い通りにならないとパニックを起こして暴力をふるう症状があったことを明らかにした。