「必要なのは弾丸ではありません。温かい食べ物と温かい慰め」
中村医師とともに現地で活動した蓮岡修氏は、「先生は現地の人々に威張った態度を見せたことがなかった。常に現地の人々に敬意を払っていたことを思い出します。大統領が先生のお棺を運んだり、村々で追悼式が行われたり、水路の水は砂漠を潤しただけではなかったのだと実感しています」と話した。
国連元政務官で慶応義塾大学大学院の田中浩一郎教授は、「誠の人道主義者で、負傷者は敵も味方もなく治療するという、ほかの人にはできないことをなさっていました。外国軍を追い出し、外国人を攻撃の対象にして、外国人がいなくなれば傀儡政権を倒せると考えるテロ組織の犠牲になった」と、その死を悲しんだ。
中村医師の志はアフガニスタンに受け継がれている。用水路の建設に携わった現地の男性は、「暮らしは大きく変わった。自分の畑に水が来て農業が再開できた。(中村医師が)亡くなって悲しいが、残った仕事を自分たちで進めたい」と話した。中村医師は生前、自分がいなくても用水路の建設を進められるようにと職業訓練校を開設し、1000人以上が参加している。
中村医師はこんな言葉を残している。「寒風の中で震え、飢えているものに必要なのは弾丸ではありません。温かい食べ物と温かい慰めです」
*NHKクローズアップ現代+(2019年12月10日放送「中村哲医師 貫いた志」)
文
バルバス