厚生労働省が25日(2019年11月)に公開した終末期医療に関するポスターが、批判を受けてわずか1日で掲示中止となった。お笑い芸人の小藪千豊が酸素チューブをつけて、最期を迎えた入院患者に扮している。「俺の人生ここで終わり? 大事なこと何にも伝えてなかったわ」「病院でおとんのすべった話聞くなら、家で嫁と子どもとゆっくりしときたかったわ ほんまええ加減にしいや」「こうなる前に、みんな『人生会議』しとこ」などという"心の声"があり、中央部分には、心臓が止まったことを示すフラットになった心電図の波形がデザインされている。
ポスターは、『その時のために』患者の満足度を向上させ、家族の負担を軽減するために、自らが望む医療やケアについて家族や医療関係者などと事前に話し合う「人生会議」を普及させる目的で作られた。厚労省はPR動画とともに吉本興業に4070万円で業務委託した。
患者や家族の会も「趣旨は悪くないが不安あおる」
ポスターが公開されると、批判の声が相次いだ。NPO法人「希望の会」の轟浩美理事長は、「人生会議」の啓発には賛同しているが、ポスターについては「現在、病に向かっている患者、家族のみなさまへの不安とともに、遺族の心を傷つける可能性を感じています」と厚労省に意見書を提出した。卵巣がん体験者の会「スマイリー」の片木美穂代表も「本来思っている人生会議の意味と違うんじゃないかと思います」と疑問を呈する。
これらの批判を受け、 厚労省は「ご意見を真摯に受け止め、改めて普及・啓発の進め方を検討します」とポスターをホームページから削除し、自治体への配布も中止した。
街で聞いてみると、「命の危機が迫っている割には、セリフや伝え方が軽い」「批判が出ることは題材的に仕方がないのでは」「興味がない人に興味を持ってもらうという意味では、いいんじゃないかと思います」など賛否両論だった。
古市憲寿スペシャルキャスター「ポスターは注意を引いてこそ意味がある。批判があったからといって、引っ込めるのはどうなのかなあ。厚労省は覚悟をもって、『こういうことを考えてほしいです』とやってほしかったなと思います」
司会の小倉智昭「死んでいく人の気持ちは、こういうことなのかもしれないな、と僕は思います。家族で話しておくことが必要ですよということは、このポスターが問題になったことで十分伝わったんじゃないの」