虐待親たちの再出発支援
エンプティ・ソファに語り掛けていた40代男性は、3か月後に変化があった。子供たちへの思いが日に日に募り、子供たちの運動会に参加することを楽しみにしてきたが、運動会前日になって児童相談所から子供への接触は控えるように連絡を受けたという。児相を責める男性の気持ちを受け止めたうえで、松林は自分が変わったことを児童相談所に示すことが大事だと伝えた。
クッションを叩き続けた30代の女性にも変化が見られた。ある日、公園を歩いている子供が転ぶのを見たという。駆け寄った母親は、子供を抱きしめるかと思ったのに、子供の頭を叩いた。女性は勇気を出して母親に「あんまり自分を責めないで」と声をかけた。女性と母親はその場で抱き合って泣いたという。「助け合いのある世の中になってほしい」と女性は話した
武田真一キャスター「"人は変われる"という言葉がありますが、そのためには時間をかけて自分と向き合い続けるという作業が必要だということがよくわかりました」
子供の虐待を扱った小説「きみはいい子」を書いた小説家・中脇初枝さんは、「その人が置かれている立場や状況というものを想像してもらう。想像することで声をかけたり、見守ったり。それが支援につながったりすると思う。想像力が必要だと思う」と話す。
虐待した親たちが再出発する道のりには、市町村や児童相談所から支援や指導を受けたり、精神科等の医療機関や民間の更生プログラムなどがあるが、まだハードルは高い。自らも虐待を受けた経験があり、現在は子供の虐待防止の活動に取り組む島田妙子さんは、「このように支援してくれるところに自分で行けない人もいるので、一歩踏み出せるように多くの人が手助けできれば虐待はきっとなくなると信じている」と語った。
*NHKクローズアップ現代+(2019年11月26日放送「虐待 親たちの"再出発"~カウンセリングの現場から~」)