絵付け火鉢が好調で、事業拡大を図る丸熊陶業に3人の若手が入社してきた。若社長で婿養子の熊谷敏春(本田大輔)が絵付けの作業場に連れてきた。「挨拶に回らせてもろてます。新しい社員です」
一人目は「藤永一徹です。京都の大学で美術工芸を学び、陶器会社で企画開発をしておりましたが、今回、社長さんに誘われてこちらにきました」とそつがない。敏春は「おいおい、社長やないで」と言いながらも、まんざらではなさそうだ。2人目は津山秋安と名乗った。
最後は前の2人とまるで違うタイプで、ぼさぼさ頭で身なり構わず、シャツにあて布がしてある。十代田八郎(松下洸平)と自己紹介した。「出身は大阪で、京都の美術大学で陶芸の奥深さを知りました。学生に陶芸を教えておりましたら、こちらを紹介されてきました。信楽でものづくりをするのを楽しみにしています」
ところが、絵付け師の深野心仙(イッセー尾形)と顔を合わせたとたん固まってしまった。
「信楽の土が好きなんです。ざらっとしてる感じが」
その日の夕方、喜美子が丸熊陶業の食堂に行くと、幼馴染の大野信作(林遣都)がいた。そして、片隅で茶碗の返却口がわからず、十代田がうろうろしていた。「さっき、絵付け班に挨拶に来られた方ですよね。茶碗、やっときます。ああ、こちらは役所の観光課の大野さん。火まつりの宣伝に来たんよ」
信作「大野信作いいます。新しい人? 年が近くて嬉しいなあ」
十代田「火まつりいうのは?」
喜美子が信楽の火まつりについて?明する。焼き物づくりに火は欠かせない。その火は神様が与えてくれるもの。だから信楽の人は心から感謝して陶器神社に松明(たいまつ)を奉納するのである。
十代田「なるほど。僕は信楽の土が好きなんです。火で焼き上げたとき、ちょっとざらざらしとる感じが」
喜美子「わかります。うちも好きです。洗練されていないゆうか、素朴で」
意気投合する二人を見て、大野は負けじと信楽は自分も好きだと、話に割り込んだ。(総合あさ8時)