熱病のような恋、そしてすれ違い。パリの街並み、ニューヨーカーがたむろする公園、そして福山雅治と石田ゆり子。要素を並べただけで、切なくも美しい大人の恋愛が匂い立つ。
スランプ気味の天才ギタリスト蒔野聡史(福山雅治)は、コンサートでレコード会社の関係者に連れられてきた小峰洋子(石田ゆり子)と出会う。一言、二言会話しただけで感覚を共有できる洋子に、瞬く間に惹かれた蒔野だが、フランスで記者として働く洋子がテロに巻き込まれかけたことで、運命の相手であるという確信する。
「世界のどこにいても、あなたが死んだら僕も死ぬ」。これ以上なくシンプルな言葉で迫る蒔野に、洋子は強く引き付けられる。婚約者のエリート経済学者のリチャード(伊勢谷友介)にも別れ、職を辞し、日本に戻り、幸せな生活が始まるはずだった。しかし、偶然と悪意が入り交じり、二人はその後の道を分かつことになる。
もう会うことはないと思っていたのに・・・6年後の出会い直し
ここまでなら、切なくももどかしい失恋の物語で終わっただろう。ところが、互いに失意の中でなんとか生活を立て直し、安定した基盤と幸せな日々をやっと手にしたと思った矢先、話は逆転する。
あの日あの時、どうしていたらすれ違わずに済んだのか。いくら過去を振り返り、悩み、憎み、咆哮しても、今ここにある現実は変えられない。別々の場所で、すれ違いが決定的になった日の記憶を反芻する二人。楽しかった日々すら残酷な思い出に変えてしまった、あの日である。
だが、この物語の主題は、現実を受け入れることでも、区切りをつけてリスタートすることでもない。過去は変わらないが、過去の出来事の意味を変えることは、今、そして未来の自分にもできることなのだ。
東京のコンサートホールで出会った日から6年。それぞれに幸せな瞬間があり、ほろ苦い思い出があり、このままもう交わらないと思っていた相手と、出会い直せる最後のチャンス。大人の恋の結末は・・・。
伏線になっている福山のうるさいぐらいのギター
序盤は若干スローペースな感もあったが、後半に差し掛かるにつれ、前半で浴びるほど聴いた福山のギターが効いてくる。過剰すれすれにロマンティックな言葉で交わされる「抑制の愛」も、甘い音色と相まってとにかくセンチメンタルだ。だからこそ、やるせなさが極まって「出てしまった」福山雅治の咆哮も作中で際立っていた。
青春映画はただひたすらに甘酸っぱいけれど、大人の胸キュンは、苦くて甘い。思い出したい恋のある人に。
ばんふぅ
おすすめ度☆☆☆