<象は静かに眠っている>
4時間の超長尺にあなたは付き合えるか?生きる目的見つからぬ4人の1日をひたすら描く怪作

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   中国・河北省石家荘市の省都には350万人が住むが、そこから50キロ離れた小さな炭鉱町。そこで暮らす4人の男女がいる。 将来の目的を見出せない高校生のブー、暴力でしか存在証明をできない青年チェン、家族から突き放された老人ジン、身勝手な母親に苛まされ、自我が乱れていく少女リンだ。

   4人は一様に人生に疲弊し、闇をさまよい続けている。北の満州里の動物園に、1日中ただ座り続けているという奇妙な象がいるという噂を聞き、魅了される。象はなぜ座っているのだろう。

   物語の中心軸はブーだ。父親は朝から酒を食らい、生計は母親が立てている。それを理由に、ブーはいじめグループの標的にされてしまう。いじめグループのリーダーには、不良グループを率いるチェンという兄がいる。チェンは親に溺愛されている弟とは違い、愛想をつかされ、自暴自棄になって朝を迎えたのは親友の妻のベッドの中だ。

   ブーが暮らす集合住宅には、いつも犬を連れて散歩するジンという老人がいる。娘夫婦と孫娘と同居し、ベランダで寝起きしている。目を覚ませば、老人ホームへの入居を娘婿に泣きながら説得される。

   ブーの同級生リンは、離婚してから子育てを放棄した母親と2人で暮らす。朝起きるとトイレが水浸しで、母親は眠ったまま起き上がらない。その日のリンの朝食は、つぶれたバースデーケーキだった。

台詞少なく劇判もなし

   4人の共通点は重く暗い空気に生活が支配されていることだ。その4人のたった1日の話だ。4人が「1日」という時間をさまざまな場所で共有し、物語の焦点に近づいては離れていく。

   物語の語りに説明台詞は一切なく、音楽もほとんど使用されていない。生活を丹念に描ききることで生まれるアリティを纏った登場人物たちが織り成す群像劇の在り方は、「誠実」だ。フー・ボーという映画作家の本質だろう。

   234分という尺を切るシーンは具体的には挙げられない。4人と同じ時間を共有することでしか、この映画の特異なラストシーンは成立しないからだ。234分という時間を登場人物とともに生きたからこそ、余韻は長く続く。

   フー・ボー監督はこの映画の完成後に自ら命を絶った。長編デビュー作であり遺作だ。

おすすめ度☆☆☆☆

丸輪 太郎

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