25日(2019年10月)に関東や東北を襲った記録的豪雨により、28日午前現在、千葉県と福島県で10人の死亡が確認されている。亡くなった10人のうち5人が車で外出中に車内が浸水したり、車ごと流されたりする「車中死」だ。
千葉県長柄町では、一宮川が氾濫し、2人が車中死した。80代の男性は車で妻を迎えに行く途中に冠水した道路で身動きがとれなくなり、死亡した。50代男性は、保育園に子どもを迎えに行く途中、車ごと河川に流された。
長柄町の住民を取材すると、みな口々に「車で避難しようとした」と言う。ある男性は、気がついた時には自宅前が胸の高さまで冠水していたため、車での移動を諦め、家の2階に避難した。別の男性も車が水没したため自宅にとどまった。「水かさが増えてきたら移動しようと思っていた。まさかそんな短時間で来るとは思わなかった」とこの男性は話す。
危険を知りながらも真っ先に車で移動しよう考える町民。生活習慣が関係しているようだ。長柄町には公共の交通機関が少なく、普段の移動手段は車中心なのだ。「人間の心理として、毎日乗っているからすぐ車のことを考えてしまう」と住民は言うが、そこに大きな危険がある。
水深20センチでエンジンが止まり、60センチで出られなくなる
関西大学環境都市工学部の尾崎平准教授は「豪雨で視界が悪い中、運転するのは非常に危険。大丈夫だと思っても突然堤防が崩れたり、走っている道路からドンと落ちたりすることも十分あり得る」と話す。特に河川が氾濫している中での運転は、視界も悪く、いつの間にか流れの早い場所に踏み込んでしまう恐れがある。
尾崎准教授によると、水深20センチでもマフラーに水が入ってエンジンが止まる。さらに水深30センチで車内に水が入ってくる。そして水深60センチになると、車外の水圧でドアが開けられなくなる。JAFは「水深10センチまで走行に問題はない」としているが、冠水している時は見た目で水深の判断が難しいため、絶対に走ってはいけない。
橋本五郎(読売新聞特別編集委員)「ともかく車は危険なのだということを頭に叩き込まないといけません」
榊原郁恵(女優・タレント)「水害って本当に怖い。深いと歩くのも大変だから、車で逃げようと考えてしまう。やはり垂直避難で、上に行くしかないのだと思います」