10月12~13日(2019年)に東日本を直撃した台風19号は、高層マンションが立ち並ぶ神奈川県川崎市の武蔵小杉にも大きな被害を与えた。住みたい街ランキングで上位に入る街にいったいなにが起きたのか。
一見浸水被害強いようにも思える高層マンションだが、そこには意外な落とし穴があった。武蔵小杉の47階建てのマンションは、地下3階にある電源設備が被害を受け、当分停電が続くという。エレベーターが使えないだけではなく、水をくみ上げる設備もダメージを受けたためトイレも使用禁止。住人の男性は、近隣のホテルに移る前はトイレも我慢していた。
「世田谷区では住民が堤防を高くすることに反対した?」
武蔵小杉は、川が通っていた地域を埋めて作られており、武蔵小杉駅から多摩川に向かってなだらかな下り坂となっている。標高差はわずか1~2メートルほどだが、河川工学専門家の山田正中央大学教授によると、1.5メートルほどの標高差は非常に大きく、停電した高層マンションが建つ窪地は、水が集まりやすい形になっているという。
那珂川とその支流、藤井川・西田川の3本の川に囲まれた水戸市岩根町でも浸水被害が発生した。那珂川の水位上昇を受け、国は西田川の水門を閉め、本流から支流に水が逆流する現象を防ごうとした。西田川の水はポンプで本流に排水していたが、想定外の水量で排水が追いつかず、結局本流よりも先に支流の西田川が氾濫してしまった。これまでの教訓がまったく役に立たなかった。
洪水の時間差攻撃の恐ろしさ
洪水の時間差攻撃も予想外だった。埼玉県坂戸市では、12日(2019年10月)の午後11時半頃に雨があがり、多くの人が避難所から自宅に戻った。しかし、翌日の午前3時頃から水位が一気に上がってきた。
茨城県神栖市では、台風が過ぎた後の昨日(2019年10月14日)になって利根川の水位が上がり、浸水被害が発生した。
山田正教授「洪水というのは波のようなもの。利根川の下流部80キロくらいは標高差が無くほとんど真っ平らで、波はなかなか進まない。満潮時には波の進みがさらに遅くなる。いわば洪水の時間差攻撃で、注意が必要」
小倉智昭「世田谷区玉川では、地域住民が堤防を高くすることに反対していたことで被害が出たという話もある」
三浦瑠麗(国際政治学者)「景観を優先しようという声が多数だった地域もあるが、住民は水利工学の専門家ではない。リスクがある土地に住んでいる以上、対策を決めておくのが大事」
山田正教授「行政も苦慮しながら判断しているが、不可抗力では済まされない。大都市では日頃は低い堤防で、増水時に上げるような堤防もあってもいい」
文・みっちゃん