昭和28年、15歳の川原喜美子(戸田恵梨香)は中学卒業を控え、「丸熊陶業」への就職が内定した。喜美子の友人・照子(大島優子)の父親が社長で、信楽でいちばん大きい陶芸会社だ。父・常治(北村一輝)は娘が大きな就職先が決まって上機嫌だ。
ある日、喜美子は会社に呼ばれる。陶工たちが働く現場を通るが、そこには女が一人もいない。事務室で会った社長の熊谷秀男(阪田マサノブ)は、申し訳なさそうに話を切り出した。「あのな、キミちゃん。照子の頼みやし、よう知っているキミちゃんやし、働いてもらおうと思ったんは確かや。ほやけど、男ばっかしの力仕事や。キミちゃんには難しいんちゃうけ?」という。喜美子は「厳しくてもかまへん、一生懸命働きます」と頼み込むが、ダメだった。従業員が反対しているらしい。
これからは自分が家族を支える柱になると思っていたのにと、喜美子は目の前が真っ暗になった。こんな小さな町では、すぐにまた就職先が見つかるとは到底思えない。
お父ちゃんが探してきた新しい仕事は「ええか、春から大阪や」
途方に暮れて家に帰ると、「今後、どんどん商売を広げていきまっさかい」と、常治が威勢よく商売の話をしているところだった。運送業の従業員を増員するというのだ。常治は月1万円という喜美子の丸熊陶業の月給をアテにしているようだ。
喜美子は父親の弾むような声を聞いてますますうなだれる。そこへ雑貨店の大野の妻・陽子(財前直見)がやってきて、「キミちゃん、できたでえ、あんたのブラウスとスカート。おばちゃん、夜なべして縫うた。就職、おめでとう」と袋を差し出した。中から取り出した新品の洋服を広げると、喜美子は耐えられなくなり泣き崩れた。
就職をほごにされたことを知った常治は、翌日から姿を消してしまう。母のマツ(富田靖子)は何か知っているようだが、喜美子は何も教えてもらえない。1週間ほどたち、常治が帰ってきた。ツテを頼りに喜美子の就職先を探していたのだという。そして、「ええか、お前は春から大阪や」と喜美子に告げた。(NHK総合あさ8時)