借金取りの男がふたり大阪から押しかけけきた。父・川原常治(北村一輝)は外出中で、借金取りは居座り、川原喜美子(川原夕空)たちが相手をしなければならない。男に風呂を沸かすようにいわれた喜美子は、風呂の湯加減を見ながら、事情を聞く。
男は「大阪で材木を仕入れる商売に手を出して、うまいこといったら2倍にして返します言うたんは、そっちやで。わしににもな、5歳になる娘がおる」
喜美子 「そうなんや」
借金取りの男「そっちから見たら、わしは借金を取りに来た怖くて悪い男やろ。せやけど、わしの娘から見たら、そっちの方が約束やぶって金返さん悪い男や。わかるか」
喜美子はうなだれる。借金取りにも幼い娘がいることを明かされ戸惑う。
「く、く、草間さん!」キミちゃん。久しぶりだね」
茶の間に戻ると、もうひとりの男がふんぞり返って、常治の酒を手酌で飲んでいる。ちゃぶ台には母親のマツ(富田靖子)が茹でた卵が5個あった。駆け寄ってきた妹の直子(やくわなつみ)が食べようと手を出すと、男はビシっと払いのけた。直子が悲鳴を上げる。
喜美子「卵を全部たべんといてください。うちが買うた卵や。直子には空襲のときに怖い思いをさせてしもうたから、怖くて癇癪を起こします。そやから、頼みます。1個でええ、妹にゆで卵やってください」
しかし、男は「誰が、やるか」と聞く耳を持たない。直子が癇癪を起こし、「ああああああ!」と叫ぶと、男の手にがぶりと噛み付いた。
借金取りが怒りだし、喜美子たちは恐怖に震えた。そこに、「やめろ!」と叫んで、一人の男が飛び込んできた。「嫌がっているだろう。離しなさい」
男はあっという間に、借金取りたちを投げ飛ばしてしまった。
喜美子「く、く、草間さん!」
草間「おお、キミちゃん。久しぶりだね」
しばらく前に、居候していた草間宗一郎(佐藤隆太)だった。あのころの弱々しい面影はまるでなく、精悍な顔つきになっていた。(NHK総合あさ8時)