ネット通販に「やらせレビュー」が横行している。高評価につられて購入して、商品が届いたら劣悪な性能で、騙されたことに気づいたという声があとを絶たないのだ。「クローズアップ現代+」が調べると、有料で偽のレビューを書く存在が浮かび上がった。さらに、その先には中国の大規模な組織があるようだ。
これまで60以上の商品でやらせレビューを投稿してきた福岡在住の36歳の会社員は、ランニング用のスマホバンドではこう書いた。「こちらの商品を発信して購入。腕にバンドを巻けて、走るときのストレスも軽快。防水加工になっているので汗も問題なさそうです」
ところが、この会社員は「1回も走ったことがない。だからすべて想像です」と悪びれず話す。毎月、アマゾンで商品を10個ほど購入し、高い評価のレビューを書くと商品代金と報酬が支払われる。商品はそのままプリマアプリで転売し「これまで6万円近く稼いだ」という。
深センの出品業者「うちも仕掛けやってますよ」
だれがやらせレビューを募集しているのか。応募を装って「レビューを書きたい」と伝えたところ、応対に出た女性は「私は出品者から依頼され、レビューの書き手を募集している仲介業者。商品を購入し、レビューを書いて写真を送ってくれれば、20日以内に商品代を送金する」という。
実際に商品を購入してみた。3日後に届いたのはUSBケーブル、ワイヤレスイヤホン、モバイルバッテリーだった。見た目はみな普通で、ワイヤレスイヤホンは問題なく使えた。しかしモバイルバッテリ ーはいくら充電しても満タンにならない。
仲介業者に電話で「品質に問題があるから5つ星はつけられない。レビューに3つ星をつけても報酬はもらえるか」と尋ねると、「それはダメ。似たような商品のレビューを参考に5つ星をつけて」といわれ、さらに「意味のない質問はしないで。私は大学を卒業して3年もたっているのよ。仮に罪悪感があったとしても、貴方に『いけないことをした』と話して何になるの。バイバイ」と切られてしまった。
商品の送付元は日本国内のアマゾンの倉庫だったが、出品者の登録情報を見ると、ほとんどが中国・深センだった。そこにあるモバイルバッテリー製造元を直撃した。「NHKですが、貴方たちはやらせレビューをしていますか」とストレートに聞くと、「正直言いますと、少ししかしていません。私たちは小規模にやっているだけです」と認めた。
アマゾンは「やらせ」と分かったら即削除
中国人出品者がインタビューに応じた。深センに本社がある家電メーカーの日本支社に勤める女性で、中国人留学生や日本人を使って数百件のレビューを書き込ませたという。女性は「レビューは形を変えた広告ですよ。なぜなら、日本人はレビューがないと商品を買わないから。食事でも、宝くじでも、行列が長いほどそこに行きたがるのよね。自分で判断する意識が低い」と開き直られた。
武田真一キャスター「見くびられたものですねえ。ネット通販は信頼が基盤だと思いますが、それを揺るがす行為は本当に憤りを感じます。仕組みとして、やらせレビューを防ぐ方法を考えるべきではないでしょうか」
もちろん、アマゾンは対価を目的としたレビューを禁止し、やらせとわかると削除している。慶應大の宮田裕章教授は「急速に進化した多言語翻訳で、非常に見分けがつきにくくなっている」と指摘する。
これらは商品を持ち上げる「あげレビュー」だが、ライバル商品を貶める「さげレビュー」も横行しているという。
*NHKクローズアップ現代+(2019年10月2日放送「追跡!ネット通販 やらせレビュー」)