昭和22年(1947年)滋賀・信楽。9歳の川原喜美子(川島夕空)は、転校先の小学校に通い、給食が大好きになった。父・常治(北村一輝)が大阪から連れてきた謎の男・草間宗一郎(佐藤隆太)は川原家の生活に馴染んで1か月が過ぎた。
喜美子は草間の食費が増えたせいで給食費が払えないと知ると、草間に早く出て行ってもらわなくてはと考える。
心の病だという草間を元気づけるため、喜美子は以前に学校帰りに出会った陶芸家の土堀に草間を連れて行く。陶芸家の慶乃川善(よしのがわ・ぜん)(村上ジョージ)は、変わらず土を掘り続けていた。喜美子は草間の手のひらに一掴みの土を乗せてみる。
慶乃川「お兄さん、わかるんけ? 信楽の土のよさ」
草間「いや、大昔はここも琵琶湖だったと聞いています。それでこういう独特の肌の粗さがあるんでしょうか。あったかい感じがしますね」
そして喜美子と草間は慶乃川の家に案内される。慶乃川は村はずれの掘立小屋に住んでいた。たくさんの陶器づくり用具が置いてある。
喜美子が欠けた茶碗を「最悪や」とけなすと...
草間は、いくつも陶器を手に取って、興味深々に器を愛でていた。
草間「満州にいたころ、陶芸家の作品に触れたことがあるんです。上司のお宅に陶磁器の大きなお皿が飾ってあった」
慶乃川が奥からわら半紙で包んだ茶碗を持ってきた。陶芸品の価値がまったくわからない喜美子は乱暴にわら半紙を広げ始める。そして不格好な形の茶碗が出てくると、
喜美子「え。あかんやん。しかも欠けてるで。ただの土の塊やないの、最悪や」
喜美子は悪気なくけなしてしまう。
その晩、草間が喜美子に苦言を呈する。
草間「キミちゃんひどかったよ。人の心を動かすのは作品じゃない。人の心だよ。子供だからといって、あのような態度はよくない。一生懸命作った人に失礼だ。慶乃川さんに失礼だ」
喜美子は草間に叱られて初めて自分の言ってしまったことを恥じて後悔しはじめる。(NHK総合あさ8時放送)