昭和22年(1947年)9歳の川原喜美子(川島夕空)は父の川原常治(北村一輝)と母の川原マツ(富田靖子)、2人の妹と共に大阪から滋賀県の信楽へ移り住んだ。事業に失敗して借金がある川原家の家計は貧しかった。
喜美子は妹たちの世話や体の弱いマツの手伝いで多忙。それに妹の直子(やくわなつみ)は、空襲の恐怖が心に傷を残し、時々癇癪を起こす。
貧しい川原家の食事は芋ばかり。そのため転入した小学校で、喜美子は初体験であった給食を食べて大喜びする。喜美子が帰宅途中、戦時中に常治の部下だった大野忠信(マギー)が店主である大野雑貨店の前で、母親のマツと忠信の妻、大野陽子(財前直見)が立ち話をしているのが聞こえた。
マツ「え?給食ってタダじゃないの?」
陽子「なんぼか家庭が払わんとあかんのやろう」
喜美子は気づかれないように離れて行った。
常治が大阪から謎の男を連れて帰ってきた
ある日、所持金が底をついた常治は大阪まで金策に出かけて帰ってくる。米や卵、缶詰など機嫌よくリュックサックから出し始めた。
常治「喜美子、うまいお粥を作ってくれ。卵をぎょうさん入れてな」
喜美子「もったいないで。一個一個ゆっくり食べんとな」
常治「ケチ臭いこと言うとったら、ケツ叩くで」
常治は大阪からひとりの男を連れて帰ってきた。そして皆に紹介し始める。
常治「こちらは大阪で暴漢に襲われて、草間宗一郎さんです」
その男は痩せこけて元気がなくげっそりしていた。「ようけ食べてください」とマツは草間宗一郎(佐藤隆太)にお粥をすすめた。
常治は帰宅する前に、草間を町医者に連れて行った。医者がいうには、草間は戦争の体験で心が病んでしまい、しばらく養生が必要だという。常治は心に栄養が足らないといわれて、わが娘直子の姿を重ねていた。
川原家の食卓で、草間はゆっくりと自分の話をし始める。戦争で苦労した話を聞いたマツは涙ぐみ、ほんまにご苦労様でしたと何度も労わった。
喜美子は、草間がいつまで自分の家にいるのか気になった。食いぶちが増えるとますます貧しくなり、給食費が払えなくなることを心配したのだ。
喜美子「あのおじさん、いつまでいるの? 給食費払えなくなったらどうするん?」
マツ「お互い様や、人は困ったときに助け合うものや」
喜美子は困ったことになったと思うのだった。(NHK総合あさ8時放送)