ドキュメンタリーのようでもあり、フィクションのようでもありで、番組サイトによると、新感覚の「フェイクドキュメントドラマ」だそうだ。新感覚かどうかはともかく、不思議なドラマなのはたしかだ。テレビ愛知と共同テレビジョンが制作し、テレビ東京系6局ネット(テレビ北海道、テレビ東京、テレビ愛知、テレビ大阪、テレビせとうち、TVQ九州放送)で放送された。
2018年に実施された「都市ブランドイメージ調査」で、名古屋は2回連続で「行きたくない街」第1位という不名誉な結果となった。そんな名古屋のイメージアップを図るべく、ドラマを制作しようということになって、愛知県出身の俳優の佐藤二朗に白羽の矢が立ち、俳優仲間の斉藤工を担ぎ出す。
まずは、2人で、美味しい名古屋めしを調査しようということになり、街へ繰り出した。
制作費かけられないテレビ愛知の企画力の勝利
ういろう、きしめん、味噌煮込みうどん、あんかけスパ・・・。名古屋のご当地グルメが次々と登場し、ネタも集まり、そこから佐藤が考えたプロットは、「名古屋を出て東京へ行こうとする娘に、名古屋の良さをアピールし、引き留める」とかなんとか。
ドラマの方向性も決まったところで、スタッフやほかの出演者(松井玲奈、平泉成、山村美智、「BOYS AND MEN」の水野勝、吉原雅斗、平松賢人)が集まり、顔合わせを兼ねた決起集会を行う。
みんながやる気になってその時、ハプニング発生。斉藤工がハリウッドの映画への出演が決まり、9月の撮影に参加できなくなったというのだ。「それは行くべきだ」と平泉らも後押しするが、斉藤が撮影に参加できないとなると、話も変わってくる。だったら斉藤が名古屋にいるいま撮ろうということになって、撮影が始まった。新幹線の最終まではあと1時間30分しかない。それまでに撮り終えなければならない。果たしてどんなドラマが生まれるか......というドラマである。
ドラマのストーリーは、老舗ういろう屋の娘(松井玲奈)が東京の彼(斉藤工)を両親(平泉成・山村美智)に紹介し、その席で、ういろうはもとより、しるこサンド、チューブのあんこ、とんかつに味噌、変わりスパゲッティなどなど、さまざまな名古屋グルメを出され、とまどいつつも、最後は「名古屋が好きになりました」と婿入りを決める話に、大幅に変更された。
肝心の佐藤二朗は隣に住むおじさんという設定で、賑やかし担当である。佐藤のアドリブで斉藤が吹き出しそうになって堪える場面が二度三度と入る。ドラマ自体はドタバタコメディで、おしゃれな吉本新喜劇といった感じだ。
実際に1時間30分のドラマを作るとなれば、制作費も時間もかかる。そこで考えた苦肉の策で、こういうかたちになったのだろうが、名古屋の良さは十分に伝わってきたので、成功と言っていいのでは。(9月22日午後4時)
くろうさぎ