日本で働く外国人労働者の子どもたちの中に、不慣れな日本語による学習の挫折、差別、いじめ、家庭の経済事情などから不登校や不就学が増えている。これらの子どもたちは、憲法で定められた教育を受ける権利、受けさせる義務の対象外になっているため、放置されたままだ。
「クローズアップ現代+」は外国人生徒数の比率が15%を超えた岐阜県の中学校を取材した。見えてきたのは、拙速で身勝手な国の受け入れ態勢だった。
岐阜県可児市の蘇南中学校は、全校生徒900人のうち150人が外国人労働者の子どもたちで、この10年で3倍に増えた。親の多くは、1980年代の入国管理法改正で入国が認められた日系ブラジル人やフィリピン人で、市内の自動車関連工場で働いている。その数は、可児市の人口10万人のうち8000人を占めるまでになっている。
生徒の15%が外国人――岐阜「蘇南中学校」特別補習しても次々退学
いま蘇南中学校で問題になっているのが、これら外国人労働者の子どもたちの無断欠席だ。朝8時の登校時間が過ぎると、静かだった職員室が一変する。4人の通訳が登校してこない生徒に確認の連絡を入れるが、親が携帯電話を持って行ってしまい連絡がつかない。この日は、登校してこない生徒が19人もいた。教師が手分けして生徒の自宅を訪れる。
生徒指導主任の竹内幸正先生が訪ねたのは、中学3年の男子生徒で、もう1年近くも不登校になっている。「歯が痛いの?、病院に行っているの?、学校に来る?」と聞くと、「うん、あした」と応えた。深く踏み込めない事情があったりして、生徒とのやり取りはこれで終わった。竹内先生は「生存確認と言うと大げさですけど、そもそも子どもがいるのか、生活の実態があるのか。その確認ということですね」と話す。
この日、不登校が続いている中学2年のフィリピン人男子生徒が両親とやってきた。生徒は勉強にも友人にも馴染めず、退学を強く希望しているという。教頭が「本当に辞めていいのですか」と問うと、母親は「本人は学校に行くのが嫌なんです。退学するしかありません。日本に来る前は問題なく勉強していました。成績もよかったんです」と説明した。結局、結論は出ず、もう少し考えてもらうことで別れた。
こうした外国人労働者の子どもたちに対応するため、蘇南中学では特別の補修プログラムを設け、学力に合わせたオーダーメイドの授業を行っている。しかし、毎月のように新たな外国人生徒の転入があり、学力差や抱える事情や国籍が一人ひとり異なり、一人も脱落させたくないというキメ細かい授業も限界に達しつつある。
しかも、そうしたキメ細かな授業をしても、蘇南中学では昨年1年間に10人の外国人生徒が退学した。その後、それらの生徒がどうしているのか確認できていないという。NHKや専門家の調査では、学校に通っていない外国人生徒は全国で8000人以上にのぼるとみられる。