今、ペットと入れる高齢者施設が急増している。最愛の犬や猫などと一緒に暮らすことで、入居者の身体に変化が見られることもあるというが...。「とくダネ!」は、ペットと入居できる特別養護老人ホーム「さくらの里 山科」で3人の入居者に密着した。
入所して2年になる81歳女性は、進行性核上性まひという原因不明の難病を患い、ほぼ寝たきりの状態だ。言葉を発することも難しいが、愛犬ナナがベッドに上がったときは自分から懸命に手の先を動かし、ナナを探り、なでる。「頑張っています。ナナちゃんの存在が大きいです。私たちだけでは無理だと思います」とスタッフは話す。愛犬がリハビリのパートナーとして重要な役割を果たしているのだ。
また、認知症改善を期待する声もある。認知症を患う73歳の女性は、大腿骨折で入院している間に、一緒に入居した愛犬ココちゃんのことを忘れてしまったが、施設に戻り触れ合ううちにココちゃんの名前を思い出し、呼びかけるようになった。
幸せホルモン「オキシトシン」が心身にいい効果
それには母親が子どもと触れ合うときに分泌される、幸せホルモン「オキシトシン」が関係しているのでは、という見方がある。愛犬と見つめ合うと、オキシトシンが通常の3倍に増えるとされ、それと認知症改善の因果関係が研究されているのだ。赤坂動物病院の柴内裕子総院長は、「事象としては必ず効果を発揮しているので、あとは科学的な裏付けを出しているところです」と話す。
反対に、最愛のペットと引き裂かれてしまった高齢者はどうなるのか。入所して6年がたつ澤田富輿子さん(75)は、入居時体重30キロあまりだった。脊柱管狭窄症をわずらい、仕事の早期退職に追い込まれた澤田さん。容体は少しずつ悪くなり、歩くこともできなくなっていき、猫のゆうすけと離れ離れになることを悩み続けるうちに拒食症を併発してしまった。今はゆうすけと暮らせるホームに入居し、体重は回復。歩けるようにもなってきた。
では、もし飼い主が先に死んでしまった場合、残されたペットはどうなるのか。「さくらの里 山科」では、親族の元に引き取られるケースとホームで暮らし続けるケースがある。後者の場合はエサ代や医療費などは親族が負担し続けなければならない。亡くなる前にしっかりと考え、周囲の人と話し合っておく必要がある。
ペットがもたらす「幸せホルモン」は倦怠期の夫婦にも有効
医療ジャーナリストの伊藤隼也さんは、愛するペットを置き去りにしないために必要なことを教えてくれた。まず「飼い始める時に自分の年齢とペットの年齢を考えること」。そして「終活でペットについてエンディングノートに記入しておくこと」と、「信頼のおける次の飼い主を見つけておくこと」。最近は「ペット信託」というサービスもあるという。
「ペットは本当にいい影響を与える。オキシトシンが出て幸せになるので、倦怠期の夫婦にも良い。認知症などへの効果も今後ますます進むと思います」と伊藤さん。
小児医療の現場でも犬が活躍している。「ファシリティドッグ」と呼ばれ、病院に常駐し、闘病による入院生活でストレスを抱える子どもに寄り添い続ける犬たちがいるのだ。しかし今のところ、日本で導入している病院は3つほどしかない。伊藤さんは「感染の問題などもあり、医療機関はどうしても犬を入れにくい文化がある。そういう文化を変えていかなくてはならない時代だと思います」と話す。
司会の小倉智昭「ペットと一緒にいると幸せになります。子はカスガイと言いますが、ペットの方がよほどカスガイです。従順だし。子どもは裏切ることもあるでしょ」