第二次世界大戦前、1933年(昭和8年)の日本。海軍省は世界最大の戦艦「大和」の建造計画を進めていた。しかし、海軍の中には反対する声も強い。これからの海戦は航空機が主流になると主張する海軍少将・山本五十六(舘ひろし)もその一人だった。
山本は提示されている大和建造の見積もりが低すぎることに目をつけ、不正を暴き、建造計画を止めようと考える。白羽の矢を立てたのは、100年に一人の逸材と言われる帝国大学の数学者・櫂直(菅田将暉)だった。数学を偏愛し、軍隊を憎む櫂は、海軍に協力することを頑なに拒むが、「巨大戦艦が完成すれば、日本は必ず戦争を始める」という山本の言葉に心を動かされる。
かくして、戦争を止めるため、大和建造費の真相に迫る櫂の戦いが始まった。
最新VFX駆使して転覆・沈没を超リアル再現
冒頭、1945年4月に、大和が米軍の空母艦載機部隊の攻撃を受け沈没する坊ノ岬沖海戦が、最新のVFXをふんだんに用いて再現される。山崎監督は可能な限り、事実に即した形で描く。魚雷や爆弾が命中し、青黒い巨大な物体が黒煙を上げ傾き、やがて転覆すると、カメラは海中から映し出す。上下逆さまになり、海中に没した大和の断末魔は、迫力満点である。
櫂と補佐役を務める田中少尉(柄本佑)のテンポがいい。田中は櫂のことを相当に嫌っているが、見積もり作りはほぼこの二人で行われるため、物語の進行とともに関係も変わっていき、観客をグッと引き込むことに成功している。
くわえて、櫂の性格も、三田紀房の原作漫画より、さらに数学狂として描かれていて、常人には理解しにくい行動に説得力を与えている。原作モノを多く手掛けている山崎監督の手腕が光る。