厚生労働省は27日(2019年8月)、公的年金の将来的な給付水準の見通しを示す「財政検証」を公表した。これは、現役世代の収入に対して、年金世代が受け取る年金額の割合がどれくらいになるか検証する、いわば「年金の健康診断」だ。その結果は「年金受給額の割合が5割を維持する見通しの一方で、2割目減りしている」だった。具体的にはどういうこと?
診断のポイントは「所得代替率50%」を維持できるかどうか。所得代替率とは、年金を受給する人たちが、その時の現役男子の平均手取り収入に対して何%の受給があるかという目安だ。たとえば、50%ということは、現役世代の手取りが平均で40万円だったら、年金受給額は20万円以上ということ。
これを下回らないと法律で決められていて、仮に維持できなくなったら年金のあり方を抜本的に考え直さないといけないと定められている。ちなみに、2019年度の年金代替率は61.7%だ。
根本匠厚生労働大臣は年金プランについて「おおむね100年安心」と語ったが、そこには「経済成長と労働参加が進めば」という大前提がある。裏を返せば、この条件が満たされなければ「大丈夫じゃない」ということになる。
こんな夫婦いる?「勤続40年以上平均手取り収入40万円・専業主婦」
では、「経済成長が進む」という条件を満たした場合の年金額をみてみよう。夫が平均賃金で40年間厚生年金に加入していて、妻が専業主婦というモデルケースの場合では――。 所得代替率は、経済成長率0.9%だと2046年に51.9%、経済成長率0.6%だと51.6%、経済成長率0.4%では2047年に50.8%となんとか50%以上を維持している。
世代別ではどうか。経済成長率が0.4%の場合、いま60歳の人が受給開始のときの年金額は22.1万円で所得代替率は60.2%。44歳のは23.4万円で53.6%、37歳の人は24万円で50.8%と、若い世代ほどギリギリになっていく。
ただ、これはモデルケースで、実際は非正規雇用、フリーランス、自営業などさまざまな働き方があり、モデルよりも所得の低い人も大勢いる。社会保険労務士で税理士の佐藤正明さんは「国民年金の人は40年間払ったとしても6万5000円です。自分はどうなのか。40年の間ずっと企業で働いていたのかなど、知ることが大事です」と話す。