常磐道のあおり運転暴行事件で、主犯の宮崎文夫容疑者(43)の暴行シーンをガラケーで撮影していた喜本奈津子容疑者(51)に間違えられ、ネットで炎上した女性がいる。女性Aさんは23日 (2019年8月)記者会見を開き、恐怖体験を語るとともにデマ投稿を行った人たちに対し法的責任を追及する姿勢を見せた。
デマ拡散させる人間には「普通の母親」や会社重役も
宮崎容疑者は8月16日に指名手配されたが、この時点では喜本容疑者の氏名は公表されておらず、ネット上で特定の動きが過熱していた。そんな中で翌17日午前4時頃、Aさんのアカウントや顔写真と共に「ガラケー女はA」というデマ情報が流れ始める。宮崎容疑者がAさんのインスタグラムをフォローしており、Aさんの写真に写る帽子やサングラスが喜本容疑者と似ていたことが原因と考えられるが、詳細ははっきりしていない。
Aさんへの誹謗中傷は10万件以上に達し、スマホは通知が鳴りっぱなし。Aさんが経営する会社にも嫌がらせ電話が入った。
朝6時過ぎに友人から情報を知らされたAさん。7時44分にSNSで「発信された情報は事実と異なる」と発信したことで、「デマなんじゃないか」という投稿が増えるなど流れが変わり始めた。翌日、喜本容疑者が逮捕されると、ネットは手のひらを返したようにデマを非難する流れになった。
「ビビット」はデマ拡散した男性に接触した。男性は「冷静に見れば信用するにたらない情報ですが、拡散された数の多さで信用してしまった。深く反省している。訴えられるなら仕方がない」と語る。
スタジオには1999年夏に「殺人事件の犯人」という事実無根のデマを流されたスマイリーキクチさんも生出演、「拡散が多ければ事実に化けるのがネット」とデマの恐怖を語った。
本当に正義感ある人は「匿名」でやらない
拡散の流れは、まず「特定班」と呼ばれる人たちが情報を投稿することから始まる。その情報がまとめサイトに集約されるのだが、これらのサイトは広告収入を稼ぐため激しい文言が使われることが多い。並行してリツイートなどでの炎上が発生し、ネット掲示板やニュースサイトに拡散していく。
デマを広める人たちは自分が正しいという正義感があるから厄介だ。しかもごく普通の人たちが多い。Aさんは「今回の誹謗中傷を行った人には、小さな子を持つお母さんやお父さんがいる。『もし自分が』『もし子どもが』と考えたらどう対応するのか」と語る。キクチさんも「僕の時も、妊婦や企業の重役もいた」と証言する。
ITジャーナリストの三上洋さんによると、炎上、拡散させる人はネットユーザーの0.5%程度。社会不安から感じる怒りと悪いヤツを懲らしめるという正義感からデマを拡散するという。
スマイリーキクチ「正義感のある人は、匿名で言葉の集団リンチをしない」
政井マヤ(フリーアナ)「裏付けなしで誰かを誹謗中傷するのは誤った正義感。報道機関は裏取りをしっかりやる」
カンニング竹山(お笑い芸人)「記者でもなんでもない若い子が書いているニュースサイトは信じちゃダメ。本当?と思った時にはネットではなく、新聞・テレビなどオールドメディアの報道を待つ」
ネットデマに対する刑罰だが、清水陽平弁護士によると、名誉毀損・業務妨害・侮辱罪にあたる可能性があり、リツイートやいいね!だけでも責任を問われることがある。
三上洋「匿名で発信しても、問題書き込みに対して情報開示請求すれば発信者がわかる」
スマイリーキクチ「名誉毀損の相場は最近100万円。最初の書き込みが借金だとすると、リツイートは連帯保証人になること」
ネットデマに巻き込まれた時は、正しい情報を発信するとともに、URLがわかる状態で画面を印刷、都道府県警察本部のサイバー犯罪相談窓口に相談するなどの対処法がある。情報発信には慎重になるとともに毅然とした対応が重要だ。
文・みっちゃん