兵庫県西宮市、甲子園球場近くに、創業1966年の老舗食堂「大力食堂」がある。地元のみならず、高校球児や甲子園ファンに愛されてきた店の名物は、2・5合のご飯の上に、卵でとじた分厚いかつが乗っている「かつ丼(大)」だった。しかしそれが消えた。今ではかつ丼は(小)のみだ。その理由は、食べ物を粗末にする客が後を絶たないから。
量の多さだけでなく、「しっかり味がついている昔の味」「癖になる」とファンも多いこの店のかつ丼。大盛りでも800円という採算を度外視した値段だが、ただ大きいだけのいわゆる「大食い用」ではない。「安くて、美味しくて、お腹いっぱい。この3つだけ。お客さんの笑顔もオッチャンの利益なの」という、店主の藤坂悦夫さん(80)の想いが詰まっていた。
口コミで広がり、メディアでも紹介されるようになった名物メニューだったが、ここ数年、SNS用に写真だけ撮って食べ残す人が急増。数人で分けてもいいし、持ち帰り用の容器も用意したのに、効果はなかった。やむやくメニューをやめることにした。
店主「米を洗っていても辛いなと思うから」
「ゴミ箱の中にみんなほかさな(捨てないと)あかんでしょ。もったいないもん。食べ物を粗末にしたらあかん。残すんだったら最初から食うな。無理して(大)を食わなければいい。米を洗っていても辛いなと思うときもある」と藤坂さん。
復活の可能性は?藤坂さんに聞くと、「しない」ときっぱり。「もうあんなもったいないことはしない」と悲しそうだ。
司会の小倉智昭「気の毒だねえ。せっかくお腹すかせた若者のために作ってくれていたのに」
夏野剛(実業家)「最近、撮影禁止の店が増えています。せっかく熱々で出しても写真だけ撮って食べない人多いから」
小倉「僕なんか高校のそばの中華屋さんに、お金のない学生のためにラーメンのスープと丼一杯のご飯で150円っていうのあったけど、未だに感謝しているよ」