18日(2019年7月)にアニメ制作会社「京都アニメーション」を襲い、34人の死者と34人の重軽傷者を出した放火殺人事件。京アニは21日、公式ホームページに「アニメーションを志し、全国から集まった若者たち。長年に渡って共に作品を創りあげてきた弊社社員が、こんな形で将来を閉ざされてしまったことが残念で、残念で言葉にできません」とコメントを発表した。
丁寧な仕事で、日本のみならず世界中のファンを魅了する作品を作り続けてきた京アニ。文芸評論家で近畿大学講師の町口哲生さんは、「作画の精密さ」「キャラクターが魅力的」「ストーリーが面白いだけでなく深い」というその仕事の3つの特徴を挙げる。
女性スタッフが活躍、作品にも女性の声が反映
スタッフのほとんどを正社員として雇い、安定した生活環境を提供することでそのクオリティーを保っていた京アニ。女性の割合が高いのも特徴だそうだ。「育児休業、育児中の在宅勤務、介護休業など、福利厚生がとても充実している。女性に活躍させ、作品にも女性の声を反映させているのです。だから京アニの作品には女性のファンもとても多い」と町口さん。
炎は、第一線で活躍するアニメ界の人材やその仕事を一瞬にして飲み込んだ。八田英明社長は過去の作画や資料なども、「一切合切ダメ」と話しており、町口さんも「京アニを立て直すのには5年から10年かかるのでは」と話す。優秀なアニメーターを集めることだけでもかなり難しいうえ、教育や適材適所への配置など、一から始めなければならないからだ。残った社員の心身のケアも必要になっていくだろう。
「今年9月公開予定だった『ヴァイオレット・エヴァーガーデン外伝』は、事件当時には最終チェックに入っていたと思うが、全部燃えてしまったので公開は無理でしょう」と町口さん。一方で海外や日本で支援の輪は広がり、アメリカのアニメ配給会社はクラウドファンディングですでに2億円以上の資金を集めたという。