京都アニメーションの一スタジオが放火されたとき、社員67人と社員以外6人の計73人が建物内にいた。このうち33人が死亡し、35人がケガ、そのうち10人は重傷だ。
犯人の男は玄関から建物に入り、持参した携行缶からガソリンのような液体を撒いて「死ね」と叫びながら火を放った。すぐに1階で爆燃し、火は一気に広がったとみられる。2階より上にいた人は避難する時間もなかったのではないかとみられている。
東京消防庁麻布消防署の元署長の坂口隆夫氏は「被害が拡大してしまった理由が3つある」と話す。1つは建物内に螺旋階段があったこと。「螺旋階段に沿って1階から3階まで床をくりぬいたような構造になっています。これが煙突のようになり、上方向に炎や煙を広げてしまった。螺旋階段がなければ、天井は塞がれているので、もっと2階に拡散するのが遅くなったと思います」
ベランダに逃げていれば・・・
被害を起きくした2つ目は、各フロアに部屋が少なかったこと。「仕切りのようなものがないので、逃げる場所はないし、火や煙が横方向に広がるのも早い。トイレに逃げて助かった人がいましたが、壁が仕切りの役を果たしたわけです」(坂口氏)
3つ目は多くの人が屋上を目指してしまったこと。坂口氏は「2階、3階にはベランダがあるのに、そっちに行かなかった理由は何か。ベランダなら、場合によっては、飛び降りればけがはするが助かります。煙の縦移動の速度は秒速3~5メートルで、人間の縦移動は秒速約0.5メートルなので逃げ切れません。横移動なら煙より人間のほうが早いのです」と話した。