さすが週刊文春やるねえ!ジャニー喜多川礼賛の中で元ジュニアの「性的虐待」告白・・・誘いに抵抗したらステージの隅っこ

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   ジャニー喜多川社長の死を伝える報道は、まるで大本営発表のようである。スポーツ紙はしかたないとしても、週刊誌も手放しの礼賛報道ばかりである。とくに新聞社系がすごい。「追悼 ジャニーさん『伝説』は『神話』へと」(サンデー毎日7月28日号)、「追悼 ジャニーさん、ありがとう」(週刊朝日7月26日号)。週朝は表紙に、ジャニーズ事務所のタレントが表紙になった号をズラッと並べた。なかでもAERAは、「追悼・ジャニーさん『YOU! やっちゃいなよ』胸に刻んだ」と銘打ち、大特集を組んだ。そんなに偉大な人だったとは知らなかった私は仰天した。

   ここでも何度か書いたように、ジャニーの性的虐待についてなぜ触れないのか、姉のメリー、その娘のジュリーとジャニーとの確執も、今後の事務所の行方を占ううえで大事なことであろう。

   さすがに、週刊文春だけはその問題を取り上げている。週刊文春は1999年に、ジャニー喜多川が少年たちを事務所で性的虐待をしているという告発記事を連載した。珍しく、事務所は週刊文春を名誉棄損で訴えた。しかし、ジャニー喜多川は法廷で、少年たちが週刊文春に語った内容に対して、「彼たち(少年たち)はうその証言をしたということを、僕は明確には言い難いです」といったのだ。東京高裁はこのジャニーの発言をもとに、「少年たちの証言は真実性がある」と認めたのである。

   今回も、嵐のメンバーと同年代の元ジュニアが、「成功したヤツはジャニーさんに感謝しているかもしれない・・・。でも、僕はそんな気持ちになれない。ジュニア時代、僕がジャニーさんの誘いに抵抗したら、ステージの隅っこに追いやられた。(中略)僕のファーストキッスはジャニーさんですからね。ショックでしたし、もうグレるしかないですよ。(中略)十代前半で悟ったというか、大人の世界って本当に汚いんだなって」と語っている。

   こうした陰の部分も含めて、ジャニー喜多川という人間を論じなくてはならないはずなのに、ジャニーズ事務所やAKB48になると、週刊誌はすぐにジャーナリズムの旗をたたんで、まるで熱烈なファンのような礼賛記事を書いて恥じることがない。

   週刊文春はこの記事中で、SMAPを解散後、事務所を出た稲垣吾郎、草彅剛、香取慎吾の3人をテレビに出演させないよう、事務所が圧力をかけていたことをスクープしている。それを問題視してきた公正取引委員会が、「近く独占禁止法違反容疑で、ジャニーズ事務所に対し、正式な警告があると見られています」と書いているのである。

   今朝18日(2019年7月)の新聞、スポーツ紙は、このことを一斉に報じてはいるが、「3人を出演させないよう圧力をかけた疑いがあることが17日、関係者への取材で分かった」(スポーツニッポン)と書いて恥じない。お前たちは週刊文春の早刷りをみて、慌てて取材したのだろうが。

   事務所側はコメントを発表して、公取委から「調査を受けた」ことは認めた。これまで陰でこそこそ語られてきたジャニーズ事務所の様々な圧力が、事実だったことが公になったのである。テレビ局の責任者たちは、これについてはっきり見解を述べるべきである。

   私は、週刊文春が書くさらに10年前、ジャニー喜多川の性癖について週刊現代で報じて大騒ぎになった。社は私を婦人雑誌へ急遽異動させることで、事務所側と手打ちをした。その構造は今も変わっていないはずである。メディアがいち芸能プロの圧力や嫌がらせに抗することができないで、さらに始末の悪い権力をチェックすることなどできるはずがない。図らずも、ジャニー喜多川死亡報道が、そのことを再び明らかにしたといっていいだろう。

「吉本興業の芸人」反社につけ込まれるギャラの安さ!やっと舞台に立てても250円!?

   闇営業問題で批判されている吉本興業・大崎洋会長のインタビューを週刊新潮が掲載しているが、この御仁、世の常識とは違う常識で生きている人のようだ。

   大崎が社長になった時点で、役員や社内にも「反社のような人たちがいた」(大崎)が、そいつらを命がけで追い出し、近代化をしたと語っている。しばらく前に、中田カウスと暴力団との関係が取り沙汰されたが、大崎は「07年当時、吉本はカウスさん本人を含め関係者の聴取を行って問題はないと判断しました」といっている。私には疑問だ。その後も島田紳助と暴力団員との親しい関係も明るみに出ているではないか。

   大崎は、僕が社長になってからはコンプライアンスを強化してきたというが、「しかし、『直の営業』については、基本的に、自由にさせてきた」という。この直営業が今回のように、詐欺集団や暴力団に付け込まれる"スキ"になっているのだ。

   直営業に走るのは、「吉本9対芸人1」ともいわれるギャラの配分や、賃金の安さにあるのに、大崎は「『最低賃金を保障しては』という議論があります。しかし、全員に払っていたら会社が潰れてしまう」と抗弁するのだ。

   いちお笑いプロが、6000人もの芸人を抱える構造そのものに無理があるのだが、そうは思わないらしい。さらに、吉本が持っている劇場が日本に17あり、NSC(吉本総合芸能学院)を出たらすぐに舞台に立つことができ、「プロの舞台に立ったのなら、たとえ1円でも250円でも払うというのが会社の考え方です」という。きょうび250円もらって喜ぶ子どもかていないぞ。

   芸人をタレントとは考えずに、消耗品と考えているようだ。「よその事務所へ行くなりしてもいい。でも誰も辞めません」と豪語するが、外で通用するような芸人がほとんどいない証左ではないのか。大崎はん、もっと芸人ひとりひとりに寄り添うてあげないかんよ。

元木 昌彦(もとき・まさひこ)
ジャーナリスト
1945年生まれ。講談社で『フライデー』『週刊現代』『Web現代』の編集長を歴任。講談社を定年後に市民メディア『オーマイニュース』編集長。現在は『インターネット報道協会』代表理事。上智大学、明治学院大学などでマスコミ論を講義。主な著書に『編集者の学校』(講談社編著)『週刊誌は死なず』(朝日新聞出版)『「週刊現代」編集長戦記』(イーストプレス)『現代の“見えざる手”』(人間の科学社新社)などがある。

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