年金をめぐる動きに新たな問題が起きている。8年前に廃止された地方議員年金復活の動きだ。
以前は10年以上在職の国会議員には最低で年412万円、在職12年以上の地方議員には年68万円から195万円の議員年金を支給する制度があり、掛け金の一部には税金も使われていた。しかし、2004年の小泉純一郎内閣時代に問題視され、2006年に国会議員、2011年に地方議員と相次いで廃止された。
今更なぜ復活の動きが出ているのか。その背景には地方議員のなり手不足があるという。
地方議員の4分の1が無投票当選
今年(2019年)4月の統一地方選では無投票当選者が激増、県議選では26.9%、町村議選では23.3%と共に過去最高を記録した。全国都道府県議会議長会は2017年に「専業議員は国民年金しか加入できない。(厚生年金がある)サラリーマンが立候補しやすいように議員の年金制度を時代にふさわしいものにすることが人材確保につながる」と議員年金の復活を訴えている。全国1788自治体の6割にあたる1035団体も同様に議員年金に関する意見書を出している。
議員年金復活以外の制度も検討されている。政府与党は2017年12月、地方議員を自治体職員とみなして厚生年金に加入できるよう法整備を進める構想を打ち出しており、地方議会は「子育て世代の若い人たちに挑戦してもらえる」「兼業が難しいことを考えると必須」と大歓迎だ。しかし、対象者は約3万3千人にもなり、公費負担は年間200億円にも上る。
こうした動きに与党内でも賛否は分かれている。「(なり手不足の)現実をわかってもらいたい。復活してもいいかな」という石田真敏総務大臣に対し、自民党の小泉進次郎衆院議員は「消費税率が上がる話の中で、なぜ地方議員の年金整備?」と疑問を投げかける。
英独では議員報酬はなく、議会を夕方や休日に開く
一方、海外の地方議員待遇は日本と大きく異なっている。イギリスやドイツでは地方議会は夕方や休日に開かれ、議員報酬は基本的に無く、月数万円の基礎手当がある程度。年金もイギリスは月1万7千円の上乗せ、ドイツは上乗せではない月額13万円だ。
菅野朋子(弁護士)「いろんな人の参加を考えるのであれば、(兼業の妨げとなる)議会の平日開会のほうが問題。年金で釣ろうというのはおかしい」
田崎史郎(政治ジャーナリスト)「海外の地方議員の仕事は行政のチェックに特化している。日本は地域の要望を行政に伝えるなど役割が違う。議員の参入障壁については、選挙に落ちたり任期が終わったりしたときに会社に戻れるような流動性が必要」
青木理(ジャーナリスト)「地方議会がどうあるべきか。日本のシステムを維持するのか、欧米のシステムに移行するのか考えなければいけない。稼業と議員を兼業する場合は利益誘導の問題もある。(自治体職員とみなして厚生年金に加入できる制度についは)行政をチェックすべき立場の議員を自治体職員とみなすのはおかしくないか」
玉川徹(テレビ朝日解説委員)「国民年金でやっていけないから別の年金というのは本末転倒。国民年金をバカにしているのか。議員が美味しいから世襲になる。議員は社会に貢献する名誉職だ。議会は通年にして毎週金曜夜6時からとかやればいい。報酬をやめて一回ごとの手当にすれば、やりたいサラリーマンはいくらでもいる」
みっちゃん