「国民年金でしょ。スズメの涙です」「国民年金で十分暮らせるといわれて納めてきたのに不安な毎日です」。国民年金受給者からはこんな声が聞こえてくる。
「老後資金2000万円問題」が話題になった金融庁報告書のモデルケースでは、「夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯」の年金収入が月額約19万円となっていた。しかし、番組視聴者からは「国民年金はもっと少ない。そんな額はありえない」という意見が多く寄せられている。
番組で取材したケースでは、都営アパートに暮らす夫婦の収入は年金が月10万円、清掃アルバイトで3万円と合計わずか13万円。この夫婦は交際費を節約。趣味も持てずに娯楽は近所の散歩。通信費を削るために固定電話を解約、携帯1台を夫婦で使っている。夫が入院したら働けなくなるため、生活保護も検討することになる。
これからは生活保護を受ける高齢世帯がどんどん増える
青木理(ジャーナリスト)「金融庁のモデルが異常。厚生年金が月額19万円というのは、夫が公務員や大企業社員だったケース。今は派遣労働が4割近くを占めているが、おそらく厚生年金に入っていない非正規労働者で、これらの層が高齢者になると大きな社会不安が起きる。生活保護になると税金で救うことになるので、誰もが関係する政策課題だ」
玉川徹(テレビ朝日解説委員)「厚生年金や退職金は、年功序列と終身雇用で、社員の生活を企業にみてもらうという制度だ。国民が困らないように面倒を見るのは国の責任のはず」
菅野朋子(弁護士)「終身雇用がモデルケースとなっているが、変わってきている。モデルケース自体が恵まれている。病気で働けなくなる高齢者は破産しかない」
小黒一正(法政大学教授)「現在、高齢者の生活保護比率は3%だが、将来は6%になるし、生活保護を受けずに水準以下で生活する人も増えていく」
また、参院選前に公表を見送った年金財政検証の問題もある。「年金の定期検診」と呼ばれ、5年ごとに将来の年金財政状況を検証するが、今回は6月ごろに公表する予定だったものだ。それが選挙後に見送られた
玉川徹「政府は年金財政検証の中身を知っている、選挙の前に出すというのが王道だ」
青木理「年金財政検証がまだ発表されないが、どう考えても選挙を意識している。今の政権にお願いしたいのは、一強の政治資産をなにに使うのか。自衛隊の憲法明記に使うより、年金問題に使って欲しい」