訴訟を装うハガキによる詐欺が急増している。「民事訴訟最終通達書」と記されたハガキを送り付け、「民事訴訟が開始されることを通達する」などと不安をあおって電話を掛けさせ、現金をだまし取るという手口だ。
2018年度、東京都消費者生活総合センターに寄せられた相談件数は2万件を超えた。2019年度の相談は5月までに6699件あり、昨年の2倍に達する勢いだ。
民事なのに「国選弁護士を紹介する」と大ウソ
ビビットスタッフ宅にも先月(2019年6月)、ハガキが届いた。ハガキに記載された番号に電話すると、男が出た。「訴訟通知センターですが、お名前をお願いします」など淡々と対応した後、男は「消費料金が未納ということで現在民事訴訟に発展しております」と伝えてきた。「以前お買い物をされたり、サービスを受けられたりした際の費用や代金の支払いができていないのですが、心あたりはありますか?」
スタッフが「ない」と答えても執拗に同じことを聞いてくる。15分間のやり取りの後、「一度電話をお切りになってお待ちしていただいてもよろしいですか?」と電話を切られた後は、かかってくることもなく、かけ直しても出なかった。どうやら「続けてもムダだ」と判断されたようだ。
電話のやり取りの中で、男が「国選弁護士を紹介することもできる」と言う場面があった。実際、別の被害者はここで偽の弁護士に電話を変わられ、弁護士費用の名目で200万円をだまし取られたという。
録音された会話を聞いた鈴木淳也弁護士は、「全部デタラメですが、特に国選弁護士は刑事事件の話で、民事事件ではありえない」と話す。
裁判所からの「通達」にハガキはあり得ない
難しい言葉が並べられ、「いかにも裁判所っぽい」ハガキの内容も、プロの眼から見ると穴だらけだ。ハガキには「契約中、若しくは債権譲渡のあった企業又は団体から契約不履行による訴状が提出された」などとあるが、「通常は具体的な企業名やどんな請求なのなど具体的なことが書いてある」と鈴木弁護士。
そもそも裁判所からの通知であれば、「特別送達」という形で、裁判所名が入った封書で送付されてくるし、郵便職員の手渡しが原則だ。ハガキには、日本国政府の紋章を印刷したものや、情報保護シールが貼られたものもある。送り主も「民事総合調停センター」「消費者相談事務局」「地方裁判所民事訴訟部」などもっともらしい団体名が使われている。
鈴木弁護士は「絶対にハガキの電話番号にかけないでください。かけてしまうとお金を払う段階にまで進んでしまいますから」と語る。
カンニング竹山(お笑いタレント)「昔、詐欺師に電話をかける番組をやっていたんですけど、なんだったら俺、ビビットでやりますから。そうやってメディアでやり続けて情報をアナウンスしていかないと気付けない」
司会の真矢ミキ「でも、こうやって放送すると、すぐに手を変え品を変え、動きが速いんですよね」
鈴木弁護士「ただ、根本は同じです。目先を変えてハガキにしたり封書にしたりしているだけですから」