7月21日(2019年)投票に向け、参院選挙戦がスタートした。2020年の憲法改正をめざす安倍首相は7月4日に福島市内で第一声を上げ、「私たちは憲法に自衛隊を明記すること公約に掲げています」と訴えた。政治ジャーナリストの田崎史郎さんによると、安倍首相が選挙戦で自衛隊明記を強く訴えていくのは初めてのこと。安倍首相の狙いはどこにあるのか。
「自衛隊がこんな頑張っているのにかわいそう」
憲法9条は、戦争の放棄と戦力の不保持を定めているが、自民党の改憲案では、現在の9条全体を維持した上で9条の2を追加、自衛隊の保持と必要な自衛措置、国会による自衛隊の統制などを規定するとしている。
田崎史郎(政治ジャーナリスト)「自衛隊は違憲という意見が多いのも事実」
玉川徹(テレビ朝日解説委員)「安倍首相の話は、悪く言うと自衛隊の名誉のために明記したいというような情緒的な話」
司会の羽鳥慎一「自衛隊がこんな頑張っているのに違憲と言われるのがかわいそうという話」
憲法への明記について、首都大学東京の木村草太教授は「政府は自衛隊を行政組織としているから、現状で明記されていないとはいえない」と疑問を呈する。また、日本が掲げる「専守防衛」についても「自衛のための必要最小限の防衛力は、国際法のルールにもある。日本が特殊というわけではない」と解説する。
ホムルズ海峡で日本のタンカーが攻撃されたことを受け、トランプ米大統領が「なぜ我々が、何の見返りもなしによその国の航路を守らなければいけないのか。アメリカが攻撃を受けても日本に戦う義務がない、不平等だ」と発言したことも改憲論に影響を与えている。
「米国の世論はトランプ大統領の意見に近い」
山口真由(米ニューヨーク州弁護士、元財務官僚)「米軍の方と話をしていても感覚が変わってきている。日本の再軍備を警戒するどころか、改憲を歓迎する雰囲気になっている。アメリカ人は、自分たちの知り合いが傷つくことに耐えられなくなっている。世論はトランプさんに近い」
木村教授は、問題の本質が「個別的自衛権か、集団的自衛権か」にあるという。集団的自衛権とは、日本と密接な関係にある国が攻められた時に、一緒に反撃する権利で、2015年の安保法制成立で認められるようになったが、従来の憲法解釈を変えたとして当時も激しい批判が起こった。
玉川徹「集団的自衛権が認められた時、安倍首相は『憲法を変える必要がなくなった』と言っていた。もし変えるなら集団的自衛権を裏付ける形になる」
木村教授「自民党は改憲の争点が集団的自衛権になることが読めているのか。改憲案が否定されたら、安保法制が否定されることなる。自民党からみてもバクチ」
憲法9条が改憲された場合、日本はアメリカとともに他国を攻撃できるのか。専門家の間でも意見が分かれているが、木村教授は解釈次第でどちらもありうると指摘する。
玉川徹「自民党の考えている条文になった時、10年、20年先の政権が何をするか考えて、憲法を考える必要がある」
改憲が最速で進んだ場合、来年(2020年)後半に国民投票が行われることになる。21日投票の参院選の行方が注目される。
文・みっちゃん